死神のマリアージュ
「あっ、あのう、そろそろ手を引いてほしいです・・」
「母さん、あんまり魁くんをいじめないでよ。初対面なんだし。魁くん、戸惑ってるでしょう?」

綿貫さんは、オーナーである母親をたしなめながら、テーブルにティーカップを2つ置いた。

「ていうか、いきなりそんなことされたら誰だって驚くからさ、もうしないでほしいんだけど。訴えられたらどうするの」と、あくまでも冷静に現実的なことを言ってる綿貫さんとは対照的に、礼子さんは気もそぞろに「あぁそうね」と言うと、あっさりアゴグイを止めて、自分の椅子に座り直した。

「ビックリさせてごめんなさいね。キミに刻まれている“生き様”をちょっと見たかったのよ。雅希ちゃんが連れてきた子だから、大丈夫だっていうのは分かってるんだけどね、うん。キミは太くて真直ぐな、とても良い“生き様”を刻んでる。波動も純粋でキレイだし。雅希ちゃんがキミを選んだのも納得だわ。私はキミのこと気に入ったよ!」
「は・・あ、どぅも。キスされるかと思った」と言った界人は、「“生き様”ってなんだ?」と顔で私に問いかけているのが分かるけど、私はあえて、界人の“問い”には答えなかった。
それよりも「別に私は界人を”選んで“ないです」と、礼子さんに言うことのほうが大事だったからだ。
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