死神のマリアージュ
「・・うん、美味しい」「うまっ!」
「実はこちらのショートブレッドは、先ほど魁飛鳥様から頂戴したものです。本来なら、他のお客様から頂いたお土産品を他のお客様にお出しするような失礼に値することはいたしませんが、とても美味しかったので。数も多めにいただいたことだし、なんでも“できたて”と聞いたので、美食家の神谷さんもきっと喜ぶだろうと思って」
「あ。やっぱり。美味しくて馴染みあるような、なんか懐かしい感覚の味だった」
「魁くんも喜んでくれて良かったです」
「飛鳥くんは料理上手な男の子よね」
「カフェのオーナーですよ、母さん。それに私どもは、飛鳥さんから飲料用のハーブを仕入れているんです。カモミールやレモングラス、ミント等。あの方ご自身で栽培されているのでオーガニックなのはもちろん、品は確かで質も高い」
「兄ちゃん、料理もすげー上手だし、植物を育てるのが趣味なんですよ。でも俺から見たら、もうプロかってくらい凝ってて」
「この子はこういう好きなことに関してはすっごい凝り性だから、語り始めると止まらないの」
「でも分かります。なんか、綿貫さんの語りを聞いてたら、兄ちゃんと似てるなーって思いました。語る内容は愛情そのものなんですよね、その好きなこととか物に対する」
「あ。ドンピシャストライク。まさにそのとおり!でも宝石を見にいらしてくださったお客様に、宝石とは関係のない紅茶やハーブのことを熱く語ってもつまらないですよね。すみません」

苦笑を浮かべている綿貫さんに、「面白いです」と私は言った。
< 80 / 359 >

この作品をシェア

pagetop