死神のマリアージュ
石を見た瞬間――つまり手に取らなくても――その石が私にメッセージを送ってくる(と私は思ってる)ことがある。
今のところは石に関わり始めて5年の間に数回しか起こってない、ごく稀なことだけど。
だからこそ、見ただけで石からの「メッセージ」がわずかでも聞こえたり視えたりしたときは、必ずその石を買うようにしている。
だってこの子は「今日」、私のところにやってくることになっているんだ。
私の、じゃなくて父さんのために。

「頼雅さんのね。なるほど・・・うん、分かりました。いいわよ。販売価格はいくらだと思う?雅希ちゃん」
「私なら・・・最低でも税抜きで5000円。たぶんそれ以上。でも7000円だとちょっと高いかなって思う」
「え!この小さい石一つが5000円!?」
「これは“ただの石”じゃない、“宝石”だよ。それにこの子はグレードも高いし、ブレスレット玉としては大きいサイズなのに状態も良い」
「グレード?」と聞く界人に、綿貫さんが「簡単に言うと、宝石や天然石の“品質”のことだよ」と説明してくれた。

「品質はアルファベットのAで表示されます。段階は3つまで。“セレナ”ではオーナーがAA(ダブルエー)以上と認めた品質の石しか入荷していません」
「つまりAが多いと、それだけ品質も高いってことですか」
「平たく言えばその通りです。ただ、その品質を決める明確な基準というものはありません。ですから最終的にはその石を販売する人の信頼度、それから石を見極める目――鑑定眼――がものを言う世界です」
「あぁ、それでか。いろいろ分かりました」
「じゃあこの子には、Aがいくつあるかな?」という礼子さんの問いかけに、私は「トリプル」と即答した。
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