先生の一途な愛情
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先生との待ち合わせはこの間のカフェの近くで、ガラス越しに自分の服装を確認する。前髪をそっと撫でながら、ドキドキと高鳴る胸を抑えきれなかった。
私の悪い癖だなぁ、なんて思いながらも、やはり好きになってしまった。先生とでも呼んでくださいもずるいと思う。鏡代わりにしていたガラスに、私より背の高い先生が映り込む。
ピシッと伸びた背筋、作り込まれた笑顔。メガネを上げる腕の角度すら定められているようにピシッと揃っている。
「お待たせしちゃいましたか? ルミさん」
「あ、いえ。ハンカチ、この前はありがとうございました」
「いえいえ。きちんとアイロンまで掛けてくださったんですね。ありがとうございます」
受け取ろうとした先生の手と、私の指が軽く触れる。それだけで熱が上がった。
「では、行きましょうか」
ポケットにハンカチをしまい込んで、そのまま自然と右手が繋がれる。ハンカチを返してお終いだと思っていたから、つい口から出てしまう。
「えっ?」
「いやでしたか?」
急な行動に、なんとも言えない気持ちが湧き上がる。でも、繋いだ右手は暖かくて優しくて、なんだか離したくない。
「行きます」
「ルミさんのような女性はどんなところが良いか、考えていたんですが。分からないので僕のオススメのお店に行こうかなと」
「はい」
頷くのが精一杯。どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。