毒舌な航空自衛官は溺れる愛を捧げたい



「……一回、俺と寝てみないか」


 …………はい?

 何を言っているのか分からなくて、

「え? 寝る?」

 と、聞き返してしまった。

「いや、なんつーか言い方間違えたな。一回、俺に抱かれてみないかって……思って……」

 首まで顔を赤くしている昴さん。

 数秒前まではかわいいなと思っていたけど、今は発言が発言だからか、全然可愛いなと思えない。それどころか、「どこまで欲求不満なんだろう」と心配になってしまった。

「スミマセン、私そういうことって本当にしたことないんです。絶対下手ですし、私、これ以上教官……昴さんに嫌われたくないんです」

 断り方も失礼がないように、昴さんの顔色を伺うように発言すると、昴さんは「ハハッ」と声に出して笑った。

「いや、うん。やっぱ柏いいな。すげぇいい」

 私は今口説かれているんだろうか。

 今こんなに優しく笑ってくれているのに、上手くできなかったら罵倒されるんじゃないかと、恐怖がよみがえる。

 昴さんに『航学時代は良い思い出』と口にした。

 けれど、本当の意味で良い思い出には、まだ到底できそうにない。それに、今こうして昴さんと話しても傷が癒えたわけではない。


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