毒舌な航空自衛官は溺れる愛を捧げたい
――私にその覚悟はなかった。
「柏、体平気なのか?」
お店に顔を出した昴さんはどこか吹っ切れたような顔をしていた。私はというと、また空に発つのかと思うと上手く笑えない。
「まだ腰痛いですけど、大丈夫です!」
けれど、私が不安気にしていれば昴さんに心配かけてしまうのも事実なわけで。元気であるように振る舞う。
「昴さん、お店が終わったら私に付き合ってほしいんですけど……」
昴さんと一緒にできるだけ近い目線でいたくて、お店が終わると近場のジムへと連れ出した。
あからじめ持ってきていた運動着に着替える私を見て、唖然とする昴さん。そんな昴さんに『基礎体力の作り方、一から教えてください!』と申し出る。
「……もう運動していないんじゃなかったのか?」
「いえ。昨日のお話を聞いて、いてもたってもいられなくなり私も体を鍛え直すことにしました! これからジムに通おうと思います!」
「鍛えても、もう、柏はパイロットにはなれないだろ」
「そうですけど、今はパイロットになりたいからじゃありません。昴さんの近くで、昴さんが頑張っているように、私も頑張りたいだけです」