毒舌な航空自衛官は溺れる愛を捧げたい
頑張って説得しようと意気込み、家の中へ入る。リビングに向かうがお母さんの姿はなかった。二階でなにやら物音がしていたため、上がってみる。私の部屋からバサバサと、本を落とす音が聞こえてきた。
――まさか、お母さん……!
頑張って集めた戦闘機グッズを捨てられているんじゃないかと、急いで部屋のドアを開ける。目に入ってきたのは両手いっぱいに戦闘機の本を持っているお母さんだった。
お母さんは私を見て、「早く手伝ってちょうだい」とでも言いたそうな雰囲気を醸し出していた。
「お……お母さん、なにしてるの? まさか捨てようとしてるの?」
やっぱり分かってくれない。拳を握り、怒りに耐えているとお母さんは、「まさか!」と、声を上げた。
「昴さん、パイロットなんでしょう? お母さんも少しは色々勉強しようと思って」
……勉、強……。お母さんが?
発せられた言葉が理解できなかった。なので、勉強?と、聞き返すと、そうよ!と、自慢げに返事をされた。
……お母さんが、勉強。
部屋から大量の本を抱え、リビングに向かおうとするお母さん。下手したら階段で転びそうだ。「貸して」と、そのままそっくり、お母さんが持っていた大量の本を自分で抱える。
「重いわよ?」
「大丈夫。航学でずっと鍛えてたし、今日も昴さんとジム行ってきたし」