眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
【Side:航希】
……喉が乾いた。
薄っすらと目を開けると、ベッドの横にあるサイドテーブルの上にミネラルウォーターのボトルが置かれていたので、だるい体を引きずるように手を伸ばし掴み取る。
カーテンの隙間から溢れた光の加減で朝はとっくに過ぎてしまったのだと気づく。
夕べは飲みすぎたな…。
水を飲むために起き上がると頭痛に気付いて頭を振る。
振ったところで頭痛が無くなるはずもなく、さらにもう一口水を飲んだ。
「あー……。だるっ。」
…声、めちゃくちゃ掠れてる。
寝ぼけた体で立ち上がり、トイレに行ってから風呂へと向かう。住み慣れた部屋では目を開けずとも歩き回れた。
熱めのシャワーを頭から被ると徐々に昨日の事を思い出してきた。
「黒田のやつ…。」
昨夜は先日会社で体調を悪くした時に迷惑をかけた社員に礼をするために食事のアポを取りいつものレストランへと向かった。
俺と秘書の黒田、俺を看病してくれた女子社員とその上司の4人での食事だったのだが、来た女性社員は俺を助けてくれた人物ではなかったのだ。なので、相手の女子社員も何故自分が呼ばれたのかわからずにキョトンとしていた。
黒田が呼び出した女は『矢部 芙美』と言う営業部に所属している人物だった。黒田の話によるとフミという名の社員は他にはいないという。
こちらに落ち度があったこともあり、事情を説明して取り敢えず食事をして解散になった。
…それなら俺が会った奴は誰なんだ?
昨日は朝から彼女に会えると思い、かなり浮き足立っていた。
あの雪の日から彼女の事が気になって仕方がなかったのだ。
あの優しい手でもう一度触れられたい…。そんな願望もあった。
期待が外れたショックと気まずい食事会の空気をリセットする為にレストランを出た後、1人で行きつけのバーへと向かった。
そこから沢山酒を煽って、バーテンをしている友人の慶介に黒田の愚痴をこぼして…。
…そうだ、しつこく絡んだから『帰れっ』って追い出されたんだっけ。
俺に…しかも客にあんな態度で追い出せるのはあいつしかいないだろう。
相変わらずの態度に思い出して勝手に口角が上がる。
シャワーのお湯を止め、タオルで濡れた体を吹き上げる。
「…パンツがねぇや。」
髪をタオルでガシガシと拭きながら、下着を取りに再びクローゼットのある寝室へぼんやりと向かう。
置きっぱなしのミネラルウォーターが目に入ると『市ノ川さん、お水です。』とフミの声と姿が脳裏に浮かんだ…。
そうだ!
タクシーを待っていたらフミの声がして、目を開けたら彼女が声をかけてきたんだ!!
それで……。
部屋に連れてきた!!
記憶を取り戻し、慌てて下着を履くとリビングへ向かい彼女を探したが何処にもいない。人の気配すらない。
玄関に行き靴を確認をするが俺の靴しかない。
「くそっ!」
首にかけていたタオルを玄関に投げつける。
リビングに戻り、ふとキッチンを見るとスープの入っていた小さな水筒が無くなっていた。
「水を取りに来た時に見つけて、持って帰ったか…。」
この事実から酔っぱらって見た夢や妄想ではなく現実だと知る。
彼女との接点をひとつ失い落胆したが、彼女にキスを拒まれなかったことを思い出してニヤけた。
「絶対に見つけてやる。」
何故かわからないが、めちゃくちゃやる気を出していた。
……喉が乾いた。
薄っすらと目を開けると、ベッドの横にあるサイドテーブルの上にミネラルウォーターのボトルが置かれていたので、だるい体を引きずるように手を伸ばし掴み取る。
カーテンの隙間から溢れた光の加減で朝はとっくに過ぎてしまったのだと気づく。
夕べは飲みすぎたな…。
水を飲むために起き上がると頭痛に気付いて頭を振る。
振ったところで頭痛が無くなるはずもなく、さらにもう一口水を飲んだ。
「あー……。だるっ。」
…声、めちゃくちゃ掠れてる。
寝ぼけた体で立ち上がり、トイレに行ってから風呂へと向かう。住み慣れた部屋では目を開けずとも歩き回れた。
熱めのシャワーを頭から被ると徐々に昨日の事を思い出してきた。
「黒田のやつ…。」
昨夜は先日会社で体調を悪くした時に迷惑をかけた社員に礼をするために食事のアポを取りいつものレストランへと向かった。
俺と秘書の黒田、俺を看病してくれた女子社員とその上司の4人での食事だったのだが、来た女性社員は俺を助けてくれた人物ではなかったのだ。なので、相手の女子社員も何故自分が呼ばれたのかわからずにキョトンとしていた。
黒田が呼び出した女は『矢部 芙美』と言う営業部に所属している人物だった。黒田の話によるとフミという名の社員は他にはいないという。
こちらに落ち度があったこともあり、事情を説明して取り敢えず食事をして解散になった。
…それなら俺が会った奴は誰なんだ?
昨日は朝から彼女に会えると思い、かなり浮き足立っていた。
あの雪の日から彼女の事が気になって仕方がなかったのだ。
あの優しい手でもう一度触れられたい…。そんな願望もあった。
期待が外れたショックと気まずい食事会の空気をリセットする為にレストランを出た後、1人で行きつけのバーへと向かった。
そこから沢山酒を煽って、バーテンをしている友人の慶介に黒田の愚痴をこぼして…。
…そうだ、しつこく絡んだから『帰れっ』って追い出されたんだっけ。
俺に…しかも客にあんな態度で追い出せるのはあいつしかいないだろう。
相変わらずの態度に思い出して勝手に口角が上がる。
シャワーのお湯を止め、タオルで濡れた体を吹き上げる。
「…パンツがねぇや。」
髪をタオルでガシガシと拭きながら、下着を取りに再びクローゼットのある寝室へぼんやりと向かう。
置きっぱなしのミネラルウォーターが目に入ると『市ノ川さん、お水です。』とフミの声と姿が脳裏に浮かんだ…。
そうだ!
タクシーを待っていたらフミの声がして、目を開けたら彼女が声をかけてきたんだ!!
それで……。
部屋に連れてきた!!
記憶を取り戻し、慌てて下着を履くとリビングへ向かい彼女を探したが何処にもいない。人の気配すらない。
玄関に行き靴を確認をするが俺の靴しかない。
「くそっ!」
首にかけていたタオルを玄関に投げつける。
リビングに戻り、ふとキッチンを見るとスープの入っていた小さな水筒が無くなっていた。
「水を取りに来た時に見つけて、持って帰ったか…。」
この事実から酔っぱらって見た夢や妄想ではなく現実だと知る。
彼女との接点をひとつ失い落胆したが、彼女にキスを拒まれなかったことを思い出してニヤけた。
「絶対に見つけてやる。」
何故かわからないが、めちゃくちゃやる気を出していた。