眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
お昼の混雑が落ち着きスタッフルームに戻るとガラス張りのミーティングブースに晴子主任とスーツ着た男性が話をしていた。
栄養士の資格を持つ晴子主任とご主人である料理長は苗字が同じなので二人とも下の名前で呼ばれていた。
「秘書課の方らしいよ。」
私がミーティングブースを気にしているのに気づいた休憩中の橋田さんが教えてくれた。
「秘書課の方がなんでここに?」
「さぁ…。なんだろうねぇ。」
今まで、総務や経理の方がここに来る事はあったが他部署の方が来る事はめったにない。
秘書課なんて初めてじゃないだろうか。そのためミーティングブースの横を通る人は皆、興味津々で見ていた。
互いに席をたち頭を下げる様子から話は終わったようだ。ミーティングブースから出てきた晴子主任と目が合った。
「あら、長月さん、ちょうどよかったわ!」
「はい。なんでしょうか?」
「こちらは秘書課の黒田さん。黒田さん、彼女がご指名頂いた長月さんです。」
晴子主任はそれぞれを紹介してくれた。
…黒田ってどこかで聞いたような。
「先日は大変お世話になりました。以前、お電話で…。」
電話…。あ!内線:201!
「あっ!あの時の!」
「あら以外ね、面識があるんですか?」
晴子主任が黒田さんの方を見た。
「お声だけ少々…。ですよね、長月さん。」
「はぃ、そんな感じです。」
「長月さん、実はね、副社長が本日のあなたの接客態度をお気に召したそうで、今後忙しくなるそうだから昼食のデリバリーをあなたに頼みたいそうなのよ。お願いできるわよね?」
「デリバリーをですか?」
「メニューは私と黒田さんで決めるので、副社長が社内にいらっしゃる時にお願いしたいそうよ。」
「秘書の私が用意するべきなのですが、業務が立て込んでおりまして…。副社長が長月さんに是非お願いしたいと。」
「文ちゃんなら大丈夫よね?」
これはお食事を断った罰なのだろうか…。上司経由で依頼されたものは断れない。
「…はい。わかりました。」
「では、早速明日の昼食からお願いします。メニューは明日の11時ごろ私から佐藤主任へご連絡致します。」
私が了承の返事をすると黒田さんは少しホッとした顔をみせ、スタッフルームからいなくなった。
「文ちゃん、副社長からご指名なんて凄いじゃない!何やったの?」
橋田さんに聞かれたので正直にトレイの返却を案内しただけだと伝えた。
「副社長、確かまだ独身って話よ!玉の輿じゃない!頑張って!」
「あはは…。そんなんじゃないと思いますよ…。」
「そうかしら?文ちゃん良い子だもん、きっと狙えるわよ!」
橋田さんはスッカリ乗り気で楽しそうにしていた。
恐らく矢部さんに私とのキスのことをバレない様に口止めの話をしたいのだ。口止めの内容をここで話すわけにもいかず、笑って誤魔化した。
ついさっきまで会う機会はもう無いと思っていたので、こんなに早く次の機会がやってくるとは思わず驚いていた。
驚きと共に副社長に会えることを嬉しく思い自然と顔がほころんでいたのだが、自分では気づいていなかった。
栄養士の資格を持つ晴子主任とご主人である料理長は苗字が同じなので二人とも下の名前で呼ばれていた。
「秘書課の方らしいよ。」
私がミーティングブースを気にしているのに気づいた休憩中の橋田さんが教えてくれた。
「秘書課の方がなんでここに?」
「さぁ…。なんだろうねぇ。」
今まで、総務や経理の方がここに来る事はあったが他部署の方が来る事はめったにない。
秘書課なんて初めてじゃないだろうか。そのためミーティングブースの横を通る人は皆、興味津々で見ていた。
互いに席をたち頭を下げる様子から話は終わったようだ。ミーティングブースから出てきた晴子主任と目が合った。
「あら、長月さん、ちょうどよかったわ!」
「はい。なんでしょうか?」
「こちらは秘書課の黒田さん。黒田さん、彼女がご指名頂いた長月さんです。」
晴子主任はそれぞれを紹介してくれた。
…黒田ってどこかで聞いたような。
「先日は大変お世話になりました。以前、お電話で…。」
電話…。あ!内線:201!
「あっ!あの時の!」
「あら以外ね、面識があるんですか?」
晴子主任が黒田さんの方を見た。
「お声だけ少々…。ですよね、長月さん。」
「はぃ、そんな感じです。」
「長月さん、実はね、副社長が本日のあなたの接客態度をお気に召したそうで、今後忙しくなるそうだから昼食のデリバリーをあなたに頼みたいそうなのよ。お願いできるわよね?」
「デリバリーをですか?」
「メニューは私と黒田さんで決めるので、副社長が社内にいらっしゃる時にお願いしたいそうよ。」
「秘書の私が用意するべきなのですが、業務が立て込んでおりまして…。副社長が長月さんに是非お願いしたいと。」
「文ちゃんなら大丈夫よね?」
これはお食事を断った罰なのだろうか…。上司経由で依頼されたものは断れない。
「…はい。わかりました。」
「では、早速明日の昼食からお願いします。メニューは明日の11時ごろ私から佐藤主任へご連絡致します。」
私が了承の返事をすると黒田さんは少しホッとした顔をみせ、スタッフルームからいなくなった。
「文ちゃん、副社長からご指名なんて凄いじゃない!何やったの?」
橋田さんに聞かれたので正直にトレイの返却を案内しただけだと伝えた。
「副社長、確かまだ独身って話よ!玉の輿じゃない!頑張って!」
「あはは…。そんなんじゃないと思いますよ…。」
「そうかしら?文ちゃん良い子だもん、きっと狙えるわよ!」
橋田さんはスッカリ乗り気で楽しそうにしていた。
恐らく矢部さんに私とのキスのことをバレない様に口止めの話をしたいのだ。口止めの内容をここで話すわけにもいかず、笑って誤魔化した。
ついさっきまで会う機会はもう無いと思っていたので、こんなに早く次の機会がやってくるとは思わず驚いていた。
驚きと共に副社長に会えることを嬉しく思い自然と顔がほころんでいたのだが、自分では気づいていなかった。