眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
「じゃあ、早速今日からお願いね。」
晴子主任からトレイを受け取った。
トレイを除くと本日のお勧めメニューになっている『鯖の味噌煮定食』が載せられていた。
黒田さんの話だと副社長は普段あまりお魚を召されないと言うので、栄養バランスを考慮してこれにしたそうだ。
社員食堂からランチをデリバリーするなんて初めてのことで、ワゴンカートなんて存在しない。なので、汁物はこぼれてしまわないよう注意し、かつ冷めないうちに急いで届けなければならなかった。
思ったより大変そうだわ…。
急いでスタッフルームを出てエレベーターで31階にある副社長室へと向かった。
「社員食堂の長月です。昼食をお待ちしました。」
扉をノックして返事を待つ。
「ああ、入って。」
中から副社長が返事をした。
部屋に入ると黒田さんと2人でソファに座って打ち合わせをしていた。
「どちらに置きましょうか?」
応接セットのローテーブルに置くべきか、それともパソコンが置いてあるデスクに置くべきか悩んだので尋ねた。
「こっちでいい。ローテーブルに置いて。」
「畏まりました。」
さっさと置いて退散しようとした時だった。
「黒田、彼女に何か飲み物を出してくれ。」
仕事があるからと断ったのだが、「直ぐにご用意致します。」と、黒田さんは部屋から出て行ってしまった。
「長月さん、取り敢えず座って。」
副社長と向かい合う感じで、黒田さんが座っていた場所に座った。
「まずはお礼を言いたい。何のことだかわかるよね?」
「先日、体調を崩された時のことでしょうか?それでしたら昨日お気持ちだけ頂くと言うことでお返事させていただきましたか…。」
「恥ずかしい話だが、僕が酔って外で眠ってしまった時も助けてくれたよね?」
「…はぃ。」
「あの時、僕は君の名前をずっと『フミ』と読むと思っていたんだ。本当は『アヤ』と言うんだね…。」
……何が言いたいんだろう?
矢部さんの事ではなく私のことを『フミ』って呼んでいたって事なの??
「あの日、なぜ帰った??」
「……あのまま、一緒にいる理由がありませんでした。」
「行くなと言ったのに?」
「副社長は眠ってしまわれましたし…。」
「僕が眠ってしまわなければ一緒にいてくれたのか?」
「それは…。」
返事に困って答えられなくなってしまった。
あのままキスを続けていたらと考えると顔が赤くなる。
「正直、僕は君に興味がある。だから一緒にいる時間を作りたいし、その時間がこのわずかな昼食でもいい。」
「興味があるって、どう言う意味でなんでしょうか…。」
「そのままだよ。初めて会ったあの日から僕の心は君に持っていかれてしまった。だから、もっと君を知りたいし、口説く時間が欲しい。」
それって、副社長が私に気があるって事!?
「…そんな。口説くだなんて冗談が過ぎます!」
こんなモデルみたいに素敵で地位のある人が私に好意を持つなんて、何のドッキリなのだろう…。
「冗談でパワハラ、セクハラで訴えられ兼ねない事できるか。職権を濫用したから今君はここにいるんだ。」
「私と話をするために食事を運ばせたんですか?」
「そうだ。名指しでお願いした。そして今はどんな契約や商談よりも緊張している。やっと君を見つけたのに、ここで終わらせるわけには行かないからな…。」
肘を膝につけ前屈み状態で手を合わせて口元を隠す。そして、副社長が向けてくる視線で彼が真剣に話しているのだと伝わってくる。
晴子主任からトレイを受け取った。
トレイを除くと本日のお勧めメニューになっている『鯖の味噌煮定食』が載せられていた。
黒田さんの話だと副社長は普段あまりお魚を召されないと言うので、栄養バランスを考慮してこれにしたそうだ。
社員食堂からランチをデリバリーするなんて初めてのことで、ワゴンカートなんて存在しない。なので、汁物はこぼれてしまわないよう注意し、かつ冷めないうちに急いで届けなければならなかった。
思ったより大変そうだわ…。
急いでスタッフルームを出てエレベーターで31階にある副社長室へと向かった。
「社員食堂の長月です。昼食をお待ちしました。」
扉をノックして返事を待つ。
「ああ、入って。」
中から副社長が返事をした。
部屋に入ると黒田さんと2人でソファに座って打ち合わせをしていた。
「どちらに置きましょうか?」
応接セットのローテーブルに置くべきか、それともパソコンが置いてあるデスクに置くべきか悩んだので尋ねた。
「こっちでいい。ローテーブルに置いて。」
「畏まりました。」
さっさと置いて退散しようとした時だった。
「黒田、彼女に何か飲み物を出してくれ。」
仕事があるからと断ったのだが、「直ぐにご用意致します。」と、黒田さんは部屋から出て行ってしまった。
「長月さん、取り敢えず座って。」
副社長と向かい合う感じで、黒田さんが座っていた場所に座った。
「まずはお礼を言いたい。何のことだかわかるよね?」
「先日、体調を崩された時のことでしょうか?それでしたら昨日お気持ちだけ頂くと言うことでお返事させていただきましたか…。」
「恥ずかしい話だが、僕が酔って外で眠ってしまった時も助けてくれたよね?」
「…はぃ。」
「あの時、僕は君の名前をずっと『フミ』と読むと思っていたんだ。本当は『アヤ』と言うんだね…。」
……何が言いたいんだろう?
矢部さんの事ではなく私のことを『フミ』って呼んでいたって事なの??
「あの日、なぜ帰った??」
「……あのまま、一緒にいる理由がありませんでした。」
「行くなと言ったのに?」
「副社長は眠ってしまわれましたし…。」
「僕が眠ってしまわなければ一緒にいてくれたのか?」
「それは…。」
返事に困って答えられなくなってしまった。
あのままキスを続けていたらと考えると顔が赤くなる。
「正直、僕は君に興味がある。だから一緒にいる時間を作りたいし、その時間がこのわずかな昼食でもいい。」
「興味があるって、どう言う意味でなんでしょうか…。」
「そのままだよ。初めて会ったあの日から僕の心は君に持っていかれてしまった。だから、もっと君を知りたいし、口説く時間が欲しい。」
それって、副社長が私に気があるって事!?
「…そんな。口説くだなんて冗談が過ぎます!」
こんなモデルみたいに素敵で地位のある人が私に好意を持つなんて、何のドッキリなのだろう…。
「冗談でパワハラ、セクハラで訴えられ兼ねない事できるか。職権を濫用したから今君はここにいるんだ。」
「私と話をするために食事を運ばせたんですか?」
「そうだ。名指しでお願いした。そして今はどんな契約や商談よりも緊張している。やっと君を見つけたのに、ここで終わらせるわけには行かないからな…。」
肘を膝につけ前屈み状態で手を合わせて口元を隠す。そして、副社長が向けてくる視線で彼が真剣に話しているのだと伝わってくる。