眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
部屋を出ることにしたものの、レセプション近くのラウンジにいては、これからパーティーに参加する社員と会ってしまう。
先ほどレセプションから客室へと向かう廊下の窓から桜の庭園が見えたので、取り敢えずそこへと向かってみた。
外に出ると航希から贈られたオフホワイトのワンピースの裾がフワリと風で揺れる。風が吹くと桜の花びらが舞って幻想的で美しい。しかし、少しだけ肌寒いと感じたので、持ってきたカーディガンに袖を通した。
庭園を見渡せる場所にベンチを見つけて腰をかけた。カバンの中のスマホをちらりと見てみるが、航希からの折り返しの電話はまだなかった。桜の木からこぼれ落ちる日差しがポカポカと心地よく眠気を誘う。春の心地よさを感じていると、突然、『ぶわっ!』と大きな風が吹いて、からからと色々なものが地面を転がっていった。
その中に紛れて白い封筒が1枚飛んでくると私の足に引っかかり止まった。
「すみません!その封筒、私のです。」
封筒を拾い上げ、声のする方を見上げる。
背が高く、光沢のあるダークグレーのスーツを着たおそらく親世代であろう男性がこちらに足早に向かってきた。年齢はかなり上だと思うが清楚感ある身なりとスタイルの良さからもしかすると実年齢よりも若く見えているのかもしれないと感じた。
「少し時間があったので桜を見ていたんですよ。そしたら先ほどの風で飛ばされてしまって…。その招待状が無いと会場にはいれないので助かりました。」
男性はこちらが何も聞いていないのに親しげに話しかけてきたので封筒を渡すタイミングが少し遅れた。
「……これ、どうぞ。」
封筒を差し出すと男性は笑顔で受け取った。
「ありがとうございます。」
男性がお礼を言ったタイミングでカバンの中でスマホが震えだした。
「いえ…。」
男性に返事をしてカバンの中からスマホを取り出すとディスプレイに航希の名前が表示されていることを確認し耳にあてた。
「もしもし。」
耳にあてた時にシャラっと母の形見のブレスレットが揺れた。
「……えっ。」
一瞬、男性が何か言いたげな表情をしたがそのまま会釈をし航希と電話をするために男性に背を向けた。
『さっき、電話に出られなくてごめん。どうした?』
「ホテルについて部屋に行ったんだけど、すごく広いお部屋だったの。他にも誰か使用するのかと思って…。」
『その部屋を使うのは俺と文だけだ。黒田にゆっくりできる部屋を取るように伝えたんだが…。』
「ゆっくりもなにも、あの部屋はまるでバカンスに来たみたいだわ。」
他にあの部屋を使う人がいないことが分かったので、庭園から先ほどの部屋へ戻ることにし歩き始めた。
『ははは。バカンスって…。でも、そう思ってゆっくりできるなら良いじゃなか。』
「豪華なものは慣れていないからやめてって言ったのに…。」
『今回は俺じゃない。文句なら予約した黒田に言ってくれ。』
「そうやって黒田さんのせいにするのね。」
『俺は部屋を用意して欲しいとしか言ってない。それより、俺もホテルにいるんだ。パーティーでの挨拶が終わったら一度そっちに行く。ランチ、部屋に運ぶようにしてあるから俺が遅かったら先に食べてて。』
「うん、分かった…。」
部屋に戻ると再度ソファーの上にバッグを置いてとりあえず10人は座れそうなソファーに座ってみたが、ゆっくりも何も広すぎて落ち着くわけがなかった。
先ほどレセプションから客室へと向かう廊下の窓から桜の庭園が見えたので、取り敢えずそこへと向かってみた。
外に出ると航希から贈られたオフホワイトのワンピースの裾がフワリと風で揺れる。風が吹くと桜の花びらが舞って幻想的で美しい。しかし、少しだけ肌寒いと感じたので、持ってきたカーディガンに袖を通した。
庭園を見渡せる場所にベンチを見つけて腰をかけた。カバンの中のスマホをちらりと見てみるが、航希からの折り返しの電話はまだなかった。桜の木からこぼれ落ちる日差しがポカポカと心地よく眠気を誘う。春の心地よさを感じていると、突然、『ぶわっ!』と大きな風が吹いて、からからと色々なものが地面を転がっていった。
その中に紛れて白い封筒が1枚飛んでくると私の足に引っかかり止まった。
「すみません!その封筒、私のです。」
封筒を拾い上げ、声のする方を見上げる。
背が高く、光沢のあるダークグレーのスーツを着たおそらく親世代であろう男性がこちらに足早に向かってきた。年齢はかなり上だと思うが清楚感ある身なりとスタイルの良さからもしかすると実年齢よりも若く見えているのかもしれないと感じた。
「少し時間があったので桜を見ていたんですよ。そしたら先ほどの風で飛ばされてしまって…。その招待状が無いと会場にはいれないので助かりました。」
男性はこちらが何も聞いていないのに親しげに話しかけてきたので封筒を渡すタイミングが少し遅れた。
「……これ、どうぞ。」
封筒を差し出すと男性は笑顔で受け取った。
「ありがとうございます。」
男性がお礼を言ったタイミングでカバンの中でスマホが震えだした。
「いえ…。」
男性に返事をしてカバンの中からスマホを取り出すとディスプレイに航希の名前が表示されていることを確認し耳にあてた。
「もしもし。」
耳にあてた時にシャラっと母の形見のブレスレットが揺れた。
「……えっ。」
一瞬、男性が何か言いたげな表情をしたがそのまま会釈をし航希と電話をするために男性に背を向けた。
『さっき、電話に出られなくてごめん。どうした?』
「ホテルについて部屋に行ったんだけど、すごく広いお部屋だったの。他にも誰か使用するのかと思って…。」
『その部屋を使うのは俺と文だけだ。黒田にゆっくりできる部屋を取るように伝えたんだが…。』
「ゆっくりもなにも、あの部屋はまるでバカンスに来たみたいだわ。」
他にあの部屋を使う人がいないことが分かったので、庭園から先ほどの部屋へ戻ることにし歩き始めた。
『ははは。バカンスって…。でも、そう思ってゆっくりできるなら良いじゃなか。』
「豪華なものは慣れていないからやめてって言ったのに…。」
『今回は俺じゃない。文句なら予約した黒田に言ってくれ。』
「そうやって黒田さんのせいにするのね。」
『俺は部屋を用意して欲しいとしか言ってない。それより、俺もホテルにいるんだ。パーティーでの挨拶が終わったら一度そっちに行く。ランチ、部屋に運ぶようにしてあるから俺が遅かったら先に食べてて。』
「うん、分かった…。」
部屋に戻ると再度ソファーの上にバッグを置いてとりあえず10人は座れそうなソファーに座ってみたが、ゆっくりも何も広すぎて落ち着くわけがなかった。