眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
【Side:航希】
「副社長、大丈夫ですか?」
黒田が呼んでる声がする…。
ゆっくりと目を開けると俺の秘書をしている黒田が心配そうにのぞき込んでいた。
「あぁ…。大丈夫だ。のどが渇いた。水をくれ…。」
「直ぐにご用意します。」
副社長室内にあるミニ冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取りだす黒田を横目で見ながら、だるい体をゆっくりと起こし、寝ていたソファーに座り直す。
ひと眠りしたせいなのか、少しは楽になった。
「それから…、下の名前が『フミ』って女性社員を探しておいてくれ、IDにそう書かれていたのが見えた。礼をしたい。」
熱に浮かされ、はっきり顔を覚えていなかったので、このIDに書かれた名前の記憶が頼りだった。
「かしこまりました。副社長をこちらへ運んでくださった女性ですね。」
普段、何も置かれていないローテーブルには薬とカットされたリンゴ、それに水筒らしきものが置いてあった。女が良く飲み物を入れて持ち歩いている小さな水筒だ。
…そういや、スープがどうのこうのって言ってたな。
普段、果物なんて口にしないのだが、なんとなく置かれていたリンゴに手が伸びた。
数年ぶりに口にしたリンゴはほんのり甘く、冷たくて旨かった。
「黒田ぁ。リンゴってこんなにうまかったっけ?」
「体調が悪いからより美味しく感じられるのではないでしょうか?」
「…そういうことか。」
リンゴをかじりながら、『大丈夫ですよ』と言った彼女の声を頭の中でなんとなく繰り返していた。
「副社長、大丈夫ですか?」
黒田が呼んでる声がする…。
ゆっくりと目を開けると俺の秘書をしている黒田が心配そうにのぞき込んでいた。
「あぁ…。大丈夫だ。のどが渇いた。水をくれ…。」
「直ぐにご用意します。」
副社長室内にあるミニ冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取りだす黒田を横目で見ながら、だるい体をゆっくりと起こし、寝ていたソファーに座り直す。
ひと眠りしたせいなのか、少しは楽になった。
「それから…、下の名前が『フミ』って女性社員を探しておいてくれ、IDにそう書かれていたのが見えた。礼をしたい。」
熱に浮かされ、はっきり顔を覚えていなかったので、このIDに書かれた名前の記憶が頼りだった。
「かしこまりました。副社長をこちらへ運んでくださった女性ですね。」
普段、何も置かれていないローテーブルには薬とカットされたリンゴ、それに水筒らしきものが置いてあった。女が良く飲み物を入れて持ち歩いている小さな水筒だ。
…そういや、スープがどうのこうのって言ってたな。
普段、果物なんて口にしないのだが、なんとなく置かれていたリンゴに手が伸びた。
数年ぶりに口にしたリンゴはほんのり甘く、冷たくて旨かった。
「黒田ぁ。リンゴってこんなにうまかったっけ?」
「体調が悪いからより美味しく感じられるのではないでしょうか?」
「…そういうことか。」
リンゴをかじりながら、『大丈夫ですよ』と言った彼女の声を頭の中でなんとなく繰り返していた。