眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
2階のシャワールームで汗を流すと、別荘に置いてあるタオル生地のバスローブを借りて身にまとった。
シャワーの熱のせいなのか航希と抱き合った余韻なのか、どこかまだ夢見心地でいてぼんやりしている。シャワールームの脱衣所の扉を開けて廊下に出ると、先にシャワールームを出た航希がトレイに飲み物とスナックを載せて階段を上がってくるところだった。
「体は大丈夫か?疲れてない?」
「うん…。」
トレイを片手に持ち変えると彼の大きな手がすっぽりと私の後頭部を包み、そっと引き寄せられるとおでこにキスをされた。
彼の甘いキスはいつも苦しいくらいドキドキした。
「さっきの部屋のバルコニーから海が綺麗に見えるんだ。」
にっこり微笑みながらドアを開けて部屋の中へと付き添う姿は紳士的でまるで王子様が現れたのかと思うほどだった。
ソファーの前のカフェテーブルにトレイを置くとカーテンを開けてバルコニーへ続く窓を開け、手招きをして私を呼んだ。
「…わたし、バスローブだよ。」
「こんな山奥に人は来ないよ。敷地内だし通りからは見えないからおいで。」
車の窓からは木で囲まれて遠くの景色がわからなかったが、山の上の方に来ていることは分かっていた。だけど、想像していた以上に別荘は山の上の方に建てられていたようで、山の合間からキラキラとブルーに輝く海が見えていた。
「きれーい!」
「だろ?ここ、俺の好きな場所。」
部屋から出たバルコニーは奥行きがたっぷり取られていて他の部屋と繋がっているので広々としていた。こんなに広いのに指と指はしっかり絡められ、手を繋いでピッタリ寄り添っていた。
「子どもの頃、従兄弟とこの別荘でよく虫取りをしたんだ。それをこのバルコニーから両親達が見守ってるんだ。顔を上げてこのバルコニーに目を向けると必ず母親が手を振ってくれていた…。」
「思い出深い場所なんだね。」
「…あぁ。そうだな。」
海の方を見て返事をする表情は過去の情景を見つめているようだった。
「初めて会った日から文の事を考えない日はない。部屋まで連れていったんだから放って置いても良かったのに色々置いていってくれたよな…。わざわざ食堂のスタッフルームまで取りに行ったんだろ?」
「うん…、施設で小さい子の看病とかよくしてたから…。なんか、その流れというか…。お節介かな?って思ったんだけど、無いよりかは良いかなぁーって。」
「子どもの面倒を見るのに慣れてるのか。それは安心して任せられるな。」
「えっ?これからココにどなたかのお子さんが来るの?」
「ははっ、通じてないか。」
「どういう事?」
「ここは帰るまで2人きりだ。誰も来ない。」
「……?? じゃあ、任せるって一体…。」
「俺たちの子どもの世話だよ。」
「えっ!私たちの子ども!? ちょっと気が早いよ!!」
「俺はずっと文と家族になって、文にそっくりな子ども達に囲まれた家庭を夢見てるけど?」
「私より航希似てくれないと…。」
「なんで俺?」
「だって、航希はイケメンだから…。」
「文だって可愛い。」
風で葉が擦れる音とチュッと唇が離れた音が耳に残る。
「プロポーズはちゃんと改めてするよ。」
耳元で囁かれると心臓が飛び跳ね、火が付いたように顔が熱くなった。
ぷ…プロポーズって!
「ぷぷっリンゴみたい。」
真っ赤な顔の私をみてリンゴに例えて笑っていた。航希の笑顔は社内で遠くから見る笑顔とは違って少年みたいできゅんとなる。その笑顔が見たくて恥ずかしさをこらえてチラリと航希を見るが、いつまでも見つめられているので自然と目が合い、その度にさらに顔が赤く熱くなった。
シャワーの熱のせいなのか航希と抱き合った余韻なのか、どこかまだ夢見心地でいてぼんやりしている。シャワールームの脱衣所の扉を開けて廊下に出ると、先にシャワールームを出た航希がトレイに飲み物とスナックを載せて階段を上がってくるところだった。
「体は大丈夫か?疲れてない?」
「うん…。」
トレイを片手に持ち変えると彼の大きな手がすっぽりと私の後頭部を包み、そっと引き寄せられるとおでこにキスをされた。
彼の甘いキスはいつも苦しいくらいドキドキした。
「さっきの部屋のバルコニーから海が綺麗に見えるんだ。」
にっこり微笑みながらドアを開けて部屋の中へと付き添う姿は紳士的でまるで王子様が現れたのかと思うほどだった。
ソファーの前のカフェテーブルにトレイを置くとカーテンを開けてバルコニーへ続く窓を開け、手招きをして私を呼んだ。
「…わたし、バスローブだよ。」
「こんな山奥に人は来ないよ。敷地内だし通りからは見えないからおいで。」
車の窓からは木で囲まれて遠くの景色がわからなかったが、山の上の方に来ていることは分かっていた。だけど、想像していた以上に別荘は山の上の方に建てられていたようで、山の合間からキラキラとブルーに輝く海が見えていた。
「きれーい!」
「だろ?ここ、俺の好きな場所。」
部屋から出たバルコニーは奥行きがたっぷり取られていて他の部屋と繋がっているので広々としていた。こんなに広いのに指と指はしっかり絡められ、手を繋いでピッタリ寄り添っていた。
「子どもの頃、従兄弟とこの別荘でよく虫取りをしたんだ。それをこのバルコニーから両親達が見守ってるんだ。顔を上げてこのバルコニーに目を向けると必ず母親が手を振ってくれていた…。」
「思い出深い場所なんだね。」
「…あぁ。そうだな。」
海の方を見て返事をする表情は過去の情景を見つめているようだった。
「初めて会った日から文の事を考えない日はない。部屋まで連れていったんだから放って置いても良かったのに色々置いていってくれたよな…。わざわざ食堂のスタッフルームまで取りに行ったんだろ?」
「うん…、施設で小さい子の看病とかよくしてたから…。なんか、その流れというか…。お節介かな?って思ったんだけど、無いよりかは良いかなぁーって。」
「子どもの面倒を見るのに慣れてるのか。それは安心して任せられるな。」
「えっ?これからココにどなたかのお子さんが来るの?」
「ははっ、通じてないか。」
「どういう事?」
「ここは帰るまで2人きりだ。誰も来ない。」
「……?? じゃあ、任せるって一体…。」
「俺たちの子どもの世話だよ。」
「えっ!私たちの子ども!? ちょっと気が早いよ!!」
「俺はずっと文と家族になって、文にそっくりな子ども達に囲まれた家庭を夢見てるけど?」
「私より航希似てくれないと…。」
「なんで俺?」
「だって、航希はイケメンだから…。」
「文だって可愛い。」
風で葉が擦れる音とチュッと唇が離れた音が耳に残る。
「プロポーズはちゃんと改めてするよ。」
耳元で囁かれると心臓が飛び跳ね、火が付いたように顔が熱くなった。
ぷ…プロポーズって!
「ぷぷっリンゴみたい。」
真っ赤な顔の私をみてリンゴに例えて笑っていた。航希の笑顔は社内で遠くから見る笑顔とは違って少年みたいできゅんとなる。その笑顔が見たくて恥ずかしさをこらえてチラリと航希を見るが、いつまでも見つめられているので自然と目が合い、その度にさらに顔が赤く熱くなった。