眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
翌日、遅めの朝食を取り食後のコーヒーを飲んでいると航希のスマホが鳴り、少し強めの口調で話をしていた。
どうやら黒田さんからで至急を要しているようだった。
「文、本当に悪い。直ぐに会社に行かなければならなくなった。」
昨晩、頻繁に黒田さんから着信があったようで、私が気にしない様にその度に外へでて話をしており、航希と出会った頃に比べれば随分暖かくなったが、それでも夜は冷えるので風邪をひいてしまわないか心配だった。
これだけの頻度で専属秘書から連絡が来るのだから、何かトラブルを抱えていることは予想がつく。
「別に構わないわ。直ぐに帰る支度するね。」
「『別に構わない』か…。」
「えっ?」
「いや、何でもない。」
昨日、大量に作った常備菜を袋に詰め、戸締りをし忘れ物が無いか確認をした。
「よし!これで大丈夫。」
準備が終わったので声を掛けようとしたが、駐車場に停めてある車の横で電話をしていたので、ひょいっと航希の視界に飛び込み準備OKの合図をする。
「…じゃぁ、着いたらまた連絡する。」
来るときに比べて帰りの車内はとても静かだった。何かをずっと考えているようで、ただ前を向いて運転をしている彼にどう話しかけて良いのか分からなかった。ただ、ずっと手を握りしめられていたので嫌われてはいないということは伝わる。
車窓を流れる景色が緑からビルが建ち並ぶグレーに変わると、夢の世界から現実へと引き戻された感じがし、急に怪しい手紙やメールの事が思い出され胃のあたりがモヤモヤとし始めていた。
見慣れた風景が増えてくるとあっという間に自宅アパートの前で車が止められた。
「…本当ならもっと一緒に居たかった。ごめんな。」
「仕事だもの。仕方ないわ。」
副社長という立場の彼が呼び出されるということは余程の事態なのだ。個人的なわがままでで彼を引き留めるわけにはいかない。
「文が作ったおかず。全部食べるから。」
そう言うと持ち帰ろうとして詰めた袋を奪われてしまった。
部屋まで送ると言われたがおそらく郵便受けは真希ちゃんの家にお世話になっていた数日分の怪しい手紙が溜まっているはず。犯人が誰かわからぬ今は航希に見つかって心配も迷惑もかけたくないので車を降りるとその場で彼を見送った。
車が見えなくなるとアパートの郵便受けを覗き込む。案の定、見覚えのある茶封筒が何通も入っていた。
「はぁーー…。」
まだこれが続いているのか…。と現実を突きつけられたようで深いため息が出る。
アパートの階段を上り鍵を回したがドアが開かない。
部屋を間違えたかと思い表札を確認するが部屋の番号も名前もあっていた。
えっ、まさかずっと鍵をかけ忘れたまま真希ちゃんの家に泊ってたの!?
自分の不用心さにゾッとした。
再び鍵を回すとカチャリとドアが開いた。
…まじか。
安い家賃の1DKのアパートの部屋はドアを開ければ部屋全を見ることができた。そして、一歩も部屋に入らずして何が起きたのか理解できた。これはもう自分一人で解決できる問題ではないと頭の中がパニックになる。急いでカバンからスマホを取り出すととりあえず真希ちゃんに電話をした。
…お願い!早く電話に出て!
震える手で通話ボタンを押してから呼び出し音が鳴る数秒でさえ、とても長い時間に感じた。
『もっしもーし?文どうしたの?』
電話に出た真希ちゃんの声が明るくて少し安堵する。
「ま…真希ちゃん?」
自然と声が震える。
『もしかして、もう帰ってきたの??パワーいっぱい貰えた?』
「うん…。パワー貰った…。だけど、帰ってきたら私の家が荒らされてるの…。」
『はっ!?どういう事?今、彼氏さんは一緒なの??』
「急な仕事が入ったって言われてアパートまで送ってもらって別れた…。」
『泥棒に入られたってこと??』
「…わからない。だけど、玄関の鍵が開いていてい、ドアを開けたら家中がめちゃくちゃになってたの…。」
『けっ…警察!!すぐに警察に電話して!!』
真希ちゃんに言われて初めて110番しなきゃいけないことに気が付いた。
どうやら黒田さんからで至急を要しているようだった。
「文、本当に悪い。直ぐに会社に行かなければならなくなった。」
昨晩、頻繁に黒田さんから着信があったようで、私が気にしない様にその度に外へでて話をしており、航希と出会った頃に比べれば随分暖かくなったが、それでも夜は冷えるので風邪をひいてしまわないか心配だった。
これだけの頻度で専属秘書から連絡が来るのだから、何かトラブルを抱えていることは予想がつく。
「別に構わないわ。直ぐに帰る支度するね。」
「『別に構わない』か…。」
「えっ?」
「いや、何でもない。」
昨日、大量に作った常備菜を袋に詰め、戸締りをし忘れ物が無いか確認をした。
「よし!これで大丈夫。」
準備が終わったので声を掛けようとしたが、駐車場に停めてある車の横で電話をしていたので、ひょいっと航希の視界に飛び込み準備OKの合図をする。
「…じゃぁ、着いたらまた連絡する。」
来るときに比べて帰りの車内はとても静かだった。何かをずっと考えているようで、ただ前を向いて運転をしている彼にどう話しかけて良いのか分からなかった。ただ、ずっと手を握りしめられていたので嫌われてはいないということは伝わる。
車窓を流れる景色が緑からビルが建ち並ぶグレーに変わると、夢の世界から現実へと引き戻された感じがし、急に怪しい手紙やメールの事が思い出され胃のあたりがモヤモヤとし始めていた。
見慣れた風景が増えてくるとあっという間に自宅アパートの前で車が止められた。
「…本当ならもっと一緒に居たかった。ごめんな。」
「仕事だもの。仕方ないわ。」
副社長という立場の彼が呼び出されるということは余程の事態なのだ。個人的なわがままでで彼を引き留めるわけにはいかない。
「文が作ったおかず。全部食べるから。」
そう言うと持ち帰ろうとして詰めた袋を奪われてしまった。
部屋まで送ると言われたがおそらく郵便受けは真希ちゃんの家にお世話になっていた数日分の怪しい手紙が溜まっているはず。犯人が誰かわからぬ今は航希に見つかって心配も迷惑もかけたくないので車を降りるとその場で彼を見送った。
車が見えなくなるとアパートの郵便受けを覗き込む。案の定、見覚えのある茶封筒が何通も入っていた。
「はぁーー…。」
まだこれが続いているのか…。と現実を突きつけられたようで深いため息が出る。
アパートの階段を上り鍵を回したがドアが開かない。
部屋を間違えたかと思い表札を確認するが部屋の番号も名前もあっていた。
えっ、まさかずっと鍵をかけ忘れたまま真希ちゃんの家に泊ってたの!?
自分の不用心さにゾッとした。
再び鍵を回すとカチャリとドアが開いた。
…まじか。
安い家賃の1DKのアパートの部屋はドアを開ければ部屋全を見ることができた。そして、一歩も部屋に入らずして何が起きたのか理解できた。これはもう自分一人で解決できる問題ではないと頭の中がパニックになる。急いでカバンからスマホを取り出すととりあえず真希ちゃんに電話をした。
…お願い!早く電話に出て!
震える手で通話ボタンを押してから呼び出し音が鳴る数秒でさえ、とても長い時間に感じた。
『もっしもーし?文どうしたの?』
電話に出た真希ちゃんの声が明るくて少し安堵する。
「ま…真希ちゃん?」
自然と声が震える。
『もしかして、もう帰ってきたの??パワーいっぱい貰えた?』
「うん…。パワー貰った…。だけど、帰ってきたら私の家が荒らされてるの…。」
『はっ!?どういう事?今、彼氏さんは一緒なの??』
「急な仕事が入ったって言われてアパートまで送ってもらって別れた…。」
『泥棒に入られたってこと??』
「…わからない。だけど、玄関の鍵が開いていてい、ドアを開けたら家中がめちゃくちゃになってたの…。」
『けっ…警察!!すぐに警察に電話して!!』
真希ちゃんに言われて初めて110番しなきゃいけないことに気が付いた。