眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
【Side:航希】
『ガコンッ!!!!』
「くそっ!!」
文に呼びされたカフェから会社に戻り、副社長室に入るなり近くにあったゴミ箱を蹴飛ばすと、部屋で待機していた黒田の足元に紙クズと共に転がっていった。
「副社長、また何処かの部署で何があったんですか?」
心配そうに声を掛けてくる。
そりゃそうだ。会社の至る所でトラブルが発生している時に経営者がイラついて物にあたっているんだ。秘書としては何が起きているのか把握しておきたいのだろう。
「悪い。彼女にフラれた。」
「このタイミングでですか!?」
目を丸くして驚いていた。
「あぁ…。」
応接用のソファーにどさっと座りこむと、両手で顔を洗うように覆い、そのまま頭を掻きむしった。
「何か飲まれますか?」
「適当に頼む。」
今1番飲みたいのは気を失うような強い酒だが、会社の状況や黒田の気遣いが伝わるので流石にそこまでは言えなかった。
「長月さんとは上手くいかれているのかと思っておりましたが…。もしかして原因は例の…。」
『プルップルッ…プルップルッ…』
黒田が何か言い掛けた時、デスクの上に置かれた電話が鳴った。
ソファーに座り込んで動く気配のない俺を目にし、急いで黒田が受話器を取る。
「…少々お待ちください。副社長、社長から内線です。」
不安そうに見つめながら受話器を俺に渡す。受話器を受け取るとデスク用の黒い革張りの椅子にだらしなくもたれかかるように座り、足をデスクの上に乗せながら話始めた。
「…もしもし、親父?」
『ガッハッハっ!お前失敗しただろ。』
第一声が馬鹿笑いとは…。電話の向こうで俺のことを馬鹿にして喜んでいる様が目に浮かぶ。
「…ああ。そうだよ。」
『情けない奴め。そのまま失恋に浸っているつもりか?』
「誰が失恋だって?」
『だって失敗したんだろ?』
「それでも失恋はしてない。俺たちは相思相愛のままだ。」
『銀行から融資続行の連絡が続々入ってきてるぞ??こんなに早く連絡が来ると言うことはお前たち別れたんじゃないのか?くくくっ。』
…なんでもお見通しって事か。
「親父、人の不幸をネタに笑うなんて性格悪いぞ。」
『あぁ、そう言えば喜美子の所に矢部議員のお嬢さんとの見合い写真が届いていたぞ。』
「母さんのところに?もちろん断ってくれたんだよな?」
『無理やり写真を押し付けられたそうだ。喜美子の顔を立てて一度くらい会ってやったらどうだ?今はフリーなんだろ?』
俺がフリーだということを笑いをこらえながら言う。
「…うるさい。そのお嬢さんに会いたければ社内にいる。わざわざ見合いで会う必要は無い。」
『そうだったな…。まぁ、会社は気にせずにお前のやりたいようにやれば良い。お前はいつも準備に時間をかけ過ぎるんだ。だから大事な一歩が遅れる。』
「あぁ、分かってる。」
『なら、任せたぞ。しっかりやれ。』
そう言うと一方的に通話が切れた。
「銀行からの融資の件はもう解決したそうだ。他の部署のトラブルも自然鎮火するだろう…。」
「と言うことはやはり長月さんが…。」
「まったく…全部1人で背負い込みやがって。俺ってそんなに頼りないか??」
「頼りないと言うよりも副社長に負担をかけたくないと言う長月さんの思いやりなのでは無いでしょか…。」
「思いやりと言うならば別れると言う選択をして欲しくなかった。」
「きっと、彼女も心を痛めているのでは無いかと…。」
「だろうな。俺に何の相談もしない罰だ。」
黒田がいれてくれたコーヒーに口を付け、今は仕事に集中しようと頭を切り替えた。
『ガコンッ!!!!』
「くそっ!!」
文に呼びされたカフェから会社に戻り、副社長室に入るなり近くにあったゴミ箱を蹴飛ばすと、部屋で待機していた黒田の足元に紙クズと共に転がっていった。
「副社長、また何処かの部署で何があったんですか?」
心配そうに声を掛けてくる。
そりゃそうだ。会社の至る所でトラブルが発生している時に経営者がイラついて物にあたっているんだ。秘書としては何が起きているのか把握しておきたいのだろう。
「悪い。彼女にフラれた。」
「このタイミングでですか!?」
目を丸くして驚いていた。
「あぁ…。」
応接用のソファーにどさっと座りこむと、両手で顔を洗うように覆い、そのまま頭を掻きむしった。
「何か飲まれますか?」
「適当に頼む。」
今1番飲みたいのは気を失うような強い酒だが、会社の状況や黒田の気遣いが伝わるので流石にそこまでは言えなかった。
「長月さんとは上手くいかれているのかと思っておりましたが…。もしかして原因は例の…。」
『プルップルッ…プルップルッ…』
黒田が何か言い掛けた時、デスクの上に置かれた電話が鳴った。
ソファーに座り込んで動く気配のない俺を目にし、急いで黒田が受話器を取る。
「…少々お待ちください。副社長、社長から内線です。」
不安そうに見つめながら受話器を俺に渡す。受話器を受け取るとデスク用の黒い革張りの椅子にだらしなくもたれかかるように座り、足をデスクの上に乗せながら話始めた。
「…もしもし、親父?」
『ガッハッハっ!お前失敗しただろ。』
第一声が馬鹿笑いとは…。電話の向こうで俺のことを馬鹿にして喜んでいる様が目に浮かぶ。
「…ああ。そうだよ。」
『情けない奴め。そのまま失恋に浸っているつもりか?』
「誰が失恋だって?」
『だって失敗したんだろ?』
「それでも失恋はしてない。俺たちは相思相愛のままだ。」
『銀行から融資続行の連絡が続々入ってきてるぞ??こんなに早く連絡が来ると言うことはお前たち別れたんじゃないのか?くくくっ。』
…なんでもお見通しって事か。
「親父、人の不幸をネタに笑うなんて性格悪いぞ。」
『あぁ、そう言えば喜美子の所に矢部議員のお嬢さんとの見合い写真が届いていたぞ。』
「母さんのところに?もちろん断ってくれたんだよな?」
『無理やり写真を押し付けられたそうだ。喜美子の顔を立てて一度くらい会ってやったらどうだ?今はフリーなんだろ?』
俺がフリーだということを笑いをこらえながら言う。
「…うるさい。そのお嬢さんに会いたければ社内にいる。わざわざ見合いで会う必要は無い。」
『そうだったな…。まぁ、会社は気にせずにお前のやりたいようにやれば良い。お前はいつも準備に時間をかけ過ぎるんだ。だから大事な一歩が遅れる。』
「あぁ、分かってる。」
『なら、任せたぞ。しっかりやれ。』
そう言うと一方的に通話が切れた。
「銀行からの融資の件はもう解決したそうだ。他の部署のトラブルも自然鎮火するだろう…。」
「と言うことはやはり長月さんが…。」
「まったく…全部1人で背負い込みやがって。俺ってそんなに頼りないか??」
「頼りないと言うよりも副社長に負担をかけたくないと言う長月さんの思いやりなのでは無いでしょか…。」
「思いやりと言うならば別れると言う選択をして欲しくなかった。」
「きっと、彼女も心を痛めているのでは無いかと…。」
「だろうな。俺に何の相談もしない罰だ。」
黒田がいれてくれたコーヒーに口を付け、今は仕事に集中しようと頭を切り替えた。