眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
葛城さんから親子鑑定の話をされてから数週間後、悩み続けた結果、勇気をだして一緒に検査をした。検査をしたと言っても細長い綿棒のようなもので口内をぐるりと撫でられるだけなのであっという間に終る。
名前に同じを使っているからといって親子とは限らない。ただの偶然かもしれない。しかし、母を良く知る葛城さんの話によれば、『彼女なら父親と子のつながりを感じられるものを残すはずだ。とすれば父親から一字もらうのが普通だろう。』と言っていた。
母が私に残してくれた私の名前とブレスレット、そして、あの日、航希との別れがあまりにも苦しくて母に助けを願った時に現れた葛城さん。すべてが母の意思によって導かれたのであればすごく嬉しい。
鑑定の結果、親子でなかったとしても私が生まれるの前の母を知る人は彼しかいない。私の知らない母の話をたくさん聞けたなら、それは私にとって幸せな事だった。ただ、逆に親子であったとしたならば…。葛城さんはあの有名なアクアリゾートの社長なのだ。隠し子と週刊誌に取り上げられスキャンダルにされてしまったら迷惑をかけてしまう。本当に親子ならば逆に今後は会わない方が良いのだと思う。もし、滅多に会うことが無いとは言っても血のつながった人間がいると言うだけでどこか安心できる。
鑑定結果は葛城さんのオフィスに届くことになっており、10日ほどで結果がわかると聞いていた。しかし、2週間以上経っても連絡がこないので、どうしたのだろうと気になっていた頃だった。
『P・Kメディカル御曹司熱愛か!?』電車の中づり広告に週刊誌の見出しが大きく書かれており、どこもかしこもその話題で会社はもちきりになっていた。
彼はもう別の女性を見つけたのね…。
胸の奥がチクリッと痛む。しかし、この痛みにも慣れなければならない…。ここで仕事をさせてもらっている以上、航希の話題は自然と耳に届いてくる。今回は熱愛報道かもしれないが、それが次は婚約、結婚、そして跡取り誕生と繋がっていく。
全ての人が無駄に痛みを味わうことが無いように…、ひっそりと自分は遠くで彼を見守ると決めたからには心から祝福すべきなのだ。
頭で分かっていても、まだ心がついていけないものね…。
航希の熱愛報道があった週末、葛城さんの秘書をしているという笹原さんという女性から連絡があり、鑑定結果について話をしたい。とアクアリゾートの社長室に呼び出されていた。
「長月様、葛城は前のスケジュールの会議が伸びておりまして…。大変恐れ入りますが、もうしばらくこちらでお待ちください。」
モスグリーンのスーツに黒のピンヒールを履きこなす女性が言った。彼女が連絡をくれた笹原さんなのだろうか…。きっちりとまとめられている髪と合わさって大人の女性感がにじみ出ていた。自分では到底出せない大人のオーラに、ついあこがれの眼差しで見つめてしまう。
「はい、大丈夫です。葛城社長は土日もお仕事なんですね。」
「普段は土日は休みにしております。今日はたまたまという感じでしょうか…。」
そう言うと笹原さんらしき女性は社長室を出て行った。
社長室のソファに座り直して部屋の中を見渡す。すると入ってきたドアとは別のドアを見つけた。どうやら隣の部屋と繋がっているようで、ドアの向こうから楽しそうな話し声が聞こえてきた。声が次第に大きくなるとドアが開き葛城さんが姿を現した。
「待たせてしまってごめんね。」
葛城さんの方に視線をやると、葛城さん越しに航希の姿を見つけてしまい体が固まってしまう。
私の動揺に気づいた葛城さんは明るい笑顔で言う。
「あっ、見つかっちゃった??」
「将文さん、バレバレですよ。」
葛城さんの技とらしい態度と口調に航希が突っ込みを入れた。
「航希くん、彼女と少し話をしていく?」
「今は止めておきます。例の大ボスを待たせているので。」
「わかった。そっちは頼んだぞ。」
「はい。こちらこそ文を頼みます。」
二人は仲が良さそうに会話をしている。いや、仲が良さそうのではなく互いに名前で呼び合うほど実際に仲が良いのだろう。
何故この二人が一緒にいるのかわからず思考が止まったまま動き出さない。
「文、そんなに驚くな。また後でな。」
そう言い残すと航希は彼がいる部屋の廊下へとつながるドアから出て行ってしまった。
名前に同じを使っているからといって親子とは限らない。ただの偶然かもしれない。しかし、母を良く知る葛城さんの話によれば、『彼女なら父親と子のつながりを感じられるものを残すはずだ。とすれば父親から一字もらうのが普通だろう。』と言っていた。
母が私に残してくれた私の名前とブレスレット、そして、あの日、航希との別れがあまりにも苦しくて母に助けを願った時に現れた葛城さん。すべてが母の意思によって導かれたのであればすごく嬉しい。
鑑定の結果、親子でなかったとしても私が生まれるの前の母を知る人は彼しかいない。私の知らない母の話をたくさん聞けたなら、それは私にとって幸せな事だった。ただ、逆に親子であったとしたならば…。葛城さんはあの有名なアクアリゾートの社長なのだ。隠し子と週刊誌に取り上げられスキャンダルにされてしまったら迷惑をかけてしまう。本当に親子ならば逆に今後は会わない方が良いのだと思う。もし、滅多に会うことが無いとは言っても血のつながった人間がいると言うだけでどこか安心できる。
鑑定結果は葛城さんのオフィスに届くことになっており、10日ほどで結果がわかると聞いていた。しかし、2週間以上経っても連絡がこないので、どうしたのだろうと気になっていた頃だった。
『P・Kメディカル御曹司熱愛か!?』電車の中づり広告に週刊誌の見出しが大きく書かれており、どこもかしこもその話題で会社はもちきりになっていた。
彼はもう別の女性を見つけたのね…。
胸の奥がチクリッと痛む。しかし、この痛みにも慣れなければならない…。ここで仕事をさせてもらっている以上、航希の話題は自然と耳に届いてくる。今回は熱愛報道かもしれないが、それが次は婚約、結婚、そして跡取り誕生と繋がっていく。
全ての人が無駄に痛みを味わうことが無いように…、ひっそりと自分は遠くで彼を見守ると決めたからには心から祝福すべきなのだ。
頭で分かっていても、まだ心がついていけないものね…。
航希の熱愛報道があった週末、葛城さんの秘書をしているという笹原さんという女性から連絡があり、鑑定結果について話をしたい。とアクアリゾートの社長室に呼び出されていた。
「長月様、葛城は前のスケジュールの会議が伸びておりまして…。大変恐れ入りますが、もうしばらくこちらでお待ちください。」
モスグリーンのスーツに黒のピンヒールを履きこなす女性が言った。彼女が連絡をくれた笹原さんなのだろうか…。きっちりとまとめられている髪と合わさって大人の女性感がにじみ出ていた。自分では到底出せない大人のオーラに、ついあこがれの眼差しで見つめてしまう。
「はい、大丈夫です。葛城社長は土日もお仕事なんですね。」
「普段は土日は休みにしております。今日はたまたまという感じでしょうか…。」
そう言うと笹原さんらしき女性は社長室を出て行った。
社長室のソファに座り直して部屋の中を見渡す。すると入ってきたドアとは別のドアを見つけた。どうやら隣の部屋と繋がっているようで、ドアの向こうから楽しそうな話し声が聞こえてきた。声が次第に大きくなるとドアが開き葛城さんが姿を現した。
「待たせてしまってごめんね。」
葛城さんの方に視線をやると、葛城さん越しに航希の姿を見つけてしまい体が固まってしまう。
私の動揺に気づいた葛城さんは明るい笑顔で言う。
「あっ、見つかっちゃった??」
「将文さん、バレバレですよ。」
葛城さんの技とらしい態度と口調に航希が突っ込みを入れた。
「航希くん、彼女と少し話をしていく?」
「今は止めておきます。例の大ボスを待たせているので。」
「わかった。そっちは頼んだぞ。」
「はい。こちらこそ文を頼みます。」
二人は仲が良さそうに会話をしている。いや、仲が良さそうのではなく互いに名前で呼び合うほど実際に仲が良いのだろう。
何故この二人が一緒にいるのかわからず思考が止まったまま動き出さない。
「文、そんなに驚くな。また後でな。」
そう言い残すと航希は彼がいる部屋の廊下へとつながるドアから出て行ってしまった。