眠れる森の王子は人魚姫に恋をした
真っ白なチャペルの正面ある天井まで伸びるガラスの壁に、雲一つない空と水平線が煌めく広々とした海が見えていた。
聖堂内にはおめでたいこの瞬間を一緒に祝う仲間たちでいっぱいだった。
そして、パイプオルガンの演奏が始まると一瞬で話し声はなくなり、音に合わせて新郎新婦が入ってくる。

「真希ちゃん、最高に綺麗!!!」

「そうだな、幸せそうだ。」

アクアリゾートの最新ホテルのチャペルにて真希ちゃんと健くんの結婚式が行われた。お父さんが式場のパンフレット用の撮影を条件に全て無料で手配をしてくれた。撮影を条件としているので、最高のカメラマンが至るところに配置され、まるで映画撮影の様だった。

私から施設の取り壊しの話が出た時、どうしても取り壊しを止められな場合は副社長が買い取ろうとしていた。と料亭で黒田さんから話が出た時は大変驚いたのだが、一緒にその場にいたお父さんが『娘がお世話になった施設ならば…』と、今後、取り壊しの心配がないように買い上げようとし始めたので慌てて真希ちゃんと二人で止めた。最終的に寄付金で十分です!となったのだが、相場の何十倍もの寄付金をさらっと送金してしまったのだ。この寄付金のおかげで当分施設はお金に困ることは無いだろう。

あれから私はアパートから葛城家へ引っ越し、姓も長月から葛城へと変わり正式にお父さんの娘となった。お父さんの口から出てくるお母さんの話はいつも幸せで溢れており母がとても愛されていたと改めて実感する。

「お母さんとお父さんもちゃんと結婚できていたらこんな風だったのかなぁ…。」

誓いのキスを済ませフラワーシャワーで見送られる二人を見て呟いた。

「文、ずっと俺の側にいろよ。何かあれば一人で抱え込むな。無駄な自己犠牲は止めろ。」

周囲のすべての視線が新郎新婦に向かう中、一人だけ私に熱い視線を送る。

「そうね、私がどう頑張っても、どう苦しんでも見つからなかった犯人をさらっと見つけて解決しちゃうんだもん、これからは何でも航希に相談するわ。」

期待通りの返事ができたのか柔らかく航希は微笑えみゆっくりと唇を重ねてきた。

「愛してる。俺には文しかいない。」

「…もう、他の人に見られるわっ!」

「みんな新郎新婦に夢中だ。誰も俺たちの事なんか見ていないよ。」

そう言うとさらに深く深くキスをして私の心を蕩けさせた。


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