大変恐縮ではありますが、イケメン執事様と同居させていただいております。
「……は?誰よ、あなた」

「ですから。清美坂真桜、と申します」


にじり寄る先輩の目を、私は微笑んだまま見返す。


英恵さんが心配そうに「真桜さん……っ」と私を呼ぶ。


「こちらは名乗りました。そちらは名乗らないのですか?まぁ、失礼な方ですね」


私が言うと先輩が「なんですって……!?」と顔を真っ赤にする。


「お嬢様、落ち着いてください。もめ事を起こしてはいけません。ここは冷静に…」

聖司くんが懸命に私に耳打ちするのを眺めていた先輩が、ハッとする。

「清美坂って……もしかして、kiyomiの……?」

kiyomiは、お義父さんの会社がやってるブランド。

何も言わない私に確信したらしい先輩が、口角をあげた。

「……それじゃああなたなのね?ど田舎出身の即席令嬢で、トップ執事を従えて調子にのってるお方がいるっていうのは」

悪意たっぷりの先輩の言葉は、さして私の心には響かないので、「ええ、そうです」とにっこりと微笑んでみせる。

それが先輩の気持ちを煽ってしまったらしく、先輩の悪役令嬢っぷりはヒートアップしていく。


「…やだわ、なにかにおわない?田舎者の香水は牛の糞というのは本当だったのね。あなたのお母様もどうやってkiyomiの代表に取り入ったのか存じ上げませんけど、きっと相当な苦労をされたのでしょうね。もしかしてkiyomiの代表は牛の糞の香りがお好みだったのかしら?フフッ」


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