十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
悪役令嬢は赤く散る
「貴様との婚約はこの瞬間を以て破棄する。答えろ、エリーザ。貴様はサラに何をしようと目論んでいた」
突き刺さる冷たい視線に背筋が凍り、投げかけられた問いに答えようと声を振り絞るけれど、震えた声は緊迫した空気に斬り裂かれるように消えていく。
婚約破棄という絶望を与える言葉に、頭は真っ白になるばかり。
煌びやかに輝く王宮の大広間の中央で、いきなり衛兵達に取り囲まれるや否や、一切の曇りを許さない磨きに磨かれた大理石の床に体を押さえつけられた。背中に回された腕が軋んで、反射的に痛みで顔が歪んでも誰も助けてはくれない。
目の前に立ち、憎しみの目をこちらに向けてくる、私の愛しい人でさえも。
「もう一度聞く。エリーザ、貴様は何を目論んでいた」
低い声で唸るようにもう一度問いかけてきた私の婚約者であり、この国の第一王子であるクラウド王太子殿下は威圧するように綺麗な顔の眉間にしわを寄せた。
会場を照らすシャンデリアの眩い光が、真相を突き止めるように殿下の黄金の髪を瞬かせる。
「わ、たしは……何も……!」
「この状況になっても尚、嘘を貫こうとするのか……愚かな女だ。その分、罪が重くなると言う事を理解してはいないようだな」
突き放す鋭い視線に、思わず息を飲んだ。この場を制する者に抗う事は許されないのだと、知らしめるような視線だった。
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