十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
「まあ!エリーザ、御機嫌よう。今日も可愛らしいわね」
朗らかな優しい笑みを浮かべる気品ある女性――この国の王妃殿下であるダニエラ様が我が家に何故かやって来ていた。
傍に仕えるお父様も普段と変わらない表情でいるし。
なんで?と疑問ばかりが頭の中をぐるぐると回るが、身に染みついた動きと共にダニエラ様に普段と変わらない挨拶をする。公爵家令嬢として恥じぬように徹底的に仕込まれた事に感謝するしかない。
「あの、どうかされたのですか?」
「はあ……ヘイベル公爵、やっぱりエリーザに外出許可を出していなかったのでは?」
「本人から聖クラチア祭に行くと聞いておりませんでしたので……」
「忙しくしている貴方を見て言えなかっただけでしょう?ねえ、エリーザ」
同意を求められて、苦笑を浮かべる私に気付くことなくダニエラ様がそっと手を取って下さった。
「クラウドの晴れ舞台を婚約者の貴方が見ないと、あの子もきっとがっかりするわ。ヘイベル公爵には私が言って聞かせましたので、一緒に行きましょう」
「こ、これから、ですか?」
「ええ。もちろん。そう言えば私が贈ったドレスは気に入らなかったかしら……今日の為に見繕ったんだけれど」
「そんな!とても嬉しかったです。ただ今日はこうなると思っていなかったので、次の舞踏会に着させて頂きますね」
「良かったわ。そうよね、突然来たのだから無理もないわ。あ、じゃあこれを……」
そう言ってダニエラ様は、自分が付けていたネックレスを私の首に付けて下さった。