十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
護衛を付けると言うお父様の提案があったけれど、王族が参加するこの祭りでは警備態勢が厳重になっているから問題ないと一人行動を勝ち取った。
何かと一人の方が動きやすいし、何より目立たない。
そうなれば向かう先はただ一つ――。
「んん~お美味しい~!」
出店に並ぶクリームがふんだんに使われたシュークリームを頬張る私は、思わず自然と綻ぶ頬を押さえてはもう一口頬張った。
一度は食べてみたかったのよね!お祭り限定で出店されるこのシュークリーム!なんで今までの人生こんな美味しいもの食べずに来たのかしら。本当に人生損してる!!
楽しめなかった分、思う存分祭りを楽しんでやるんだから!
そう思って大きな口を開けて噛り付こうとする私の前に、フードの下に潜む綺麗な蒼い瞳が驚きの色を混ぜて私を映し出していた。
「エリーザ?」
「へ……?」
拍子抜けた私の声が、賑やかな声にかき消されて消えていく。
本日二度目のどうして?と慌てる思考回路に陥った私との距離を縮めてくるその人に、思わず心が高鳴った。
全身を駆け巡る血が一気に熱くなり、顔が瞬時に火照るのが分かった。
「殿、下っ……?!」
こんな場所に居るはずもない殿下に困惑するあまり、咄嗟に全力でその場から逃げ出した。