十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

 人混みに紛れて、とりあえず隠れられそうな出店の裏に逃げ込む。ここまでする必要もないのに、反射的に動いてしまった。

 改めて会った殿下のあまりのかっこよさに狼狽えるなんて……私ったら何してるのよ。

 今まで散々自分からアプローチしてきたじゃない。なのに今更、どうしてこんな!

「はあ……」

 落ち着くのよ、エリーザ。

 まずは手に持っているこのシュークリームで気持ちを落ち着かせて。うん……美味しい。

 気持ちが落ち着いた所で冷静に今の状況を分析するわよ。

 私が逃げた事で私の死が動く引き金は引かれていないはず。それどころか逆に良い動きをしたのでは?

 サラと上手く結ばれるには、私のことを嫌ってもらった方が好都合だ。

 殿下の幸せのために愛想のない婚約者の動きをすれば、より二人の親密度は上がっていき、二人の恋路の邪魔をしない私は死なずに済む。

 サラには恋の応援をして、今までとは違う互いに良い関係を保って、殿下に嫌われるように彼の前だけは悪役令嬢を演じればいい。

 これよ。この作戦で動けば、今回は皆が幸せになれるはず!

「この後は殿下とサラが出会うのを見守って帰るわよ!」

 こそこそとする私を周囲から変な目で見られているとは気づかないまま、パレードが始まるのを待った。

 勿論、美味しそうな出店の品を堪能しながら。

 お腹が大分満たされた頃、大通りにぞろぞろと人が集まり始め、高らかな演奏と共に行進する騎士の後ろを王家の紋章が刻まれた馬車がゆっくりと進んでくる。
< 13 / 60 >

この作品をシェア

pagetop