十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
馬車の先頭で行進を導くように、馬に乗った殿下の姿がはっきりと見えた。
――遂に始まった。始まりの日の運命の出会いがやって来る。
無駄に緊張が走っては、体が震えそうになるのをぐっと堪えた。
大丈夫、私は生きている……。
確かめるようにそっと胸を撫でると、命を刻むように規則正しく心音が伝わってきて妙に安心する。
だけど、響き渡った悲鳴で緊張感は一気に高まった。
ああ、遂に二人が出会ってしまう。
大通りから飛び出した子供に驚いた、王家の旗を掲げる殿下の隣を進む馬が暴れ、子供を庇おうと一人の少女が助けに出る、この未来を私は知っている。
「サラ……」
助けに出た少女こそ、殿下の想い人であるサラ。
馬を宥める為に咄嗟に動いた殿下が傷を負い、そこでサラが聖なる力である治癒魔法で殿下の傷を癒す――こうして聖女という存在が皆に知れ渡ることになる。