十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
ふと見上げれば、殿下を乗せた馬がふんと鼻を鳴らす。
「ずっと探していた。行くぞ」
「殿、下……?」
いつの間にか馬から降りた殿下に、そのままひょいと体を持ち上げられてしまう。私を支えるようにして再び馬に跨った殿下の体温が背中にそっと伝わってくる。
私を乗せたまま殿下は馬を進ませると、喜びを噛みしめるように私に笑って見せた。
「俺の瞳の色のドレスを着てくれたお陰で、すぐにエリーザが分かった」
「あの、これはどういう……?」
「今日の俺の晴れ舞台を、愛しい婚約者にはすぐ近くで見てもらいたいんだ」
耳元でそう囁かれると、冷たくなっていた体が一気に熱くなる。
冷静に今の状況を把握したいのに、うるさい程に鳴り響く心音のせいで何も考えられない。
動揺を隠せない私を乗せた馬は止まることはなく、殿下との訳の分からない幸せな時間が私にやって来てしまった。
まさかの新たな、破滅エンドの道開拓しちゃってる?!うそ!死にたくないのに!!
赤くなったり青くなったりする私を置いて、今日という日は目まぐるしく進んで行ってしまった。