十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
高鳴る鼓動が今にも殿下の耳にも届いてしまうんじゃないかって程、うるさく鳴り響く。
もう片方の手で優しく髪を撫でられて、妙に擽ったい。
ああ……私が殿下の瞳に映っている。サラじゃなくて、私が――。
って!!そんなのダメに決まってるじゃない!!
始まりの日が今までとは違う今回の人生で、流れに身を任せていてはきっと最悪な終わりがやって来る。
絶対に殿下にはサラと結ばれて、私は死なずに生きる未来を選ばなきゃいけないんだから。
気持ちを奮い立たせて逃げるように私は立ち上がって、そっぽを向いたまま冷たい声を意識してこう言い放った。
「婚約者と言えど、そうやって勝手に気安く私に触れないでいただきたいですわ」
私は悪役令嬢、そう悪役令嬢。
わざとらしくうんざりとした溜め息もついて、可愛くない女を演じるのよ。
今までだって可愛くない嫌気の差す女として扱われて来たんだから、きっと上手くいく。
殿下の恋は絶対に邪魔致しませんから、どうか向けるべき相手に……サラに目を向けて下さい。