十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

「貴様がサラに行った非道の数々、忘れたとでも言いたいのか?だが残念だったな。こちらにはこれまでの証言に加え、今夜の聖女であるサラへの暗殺を実行しようとした動かぬ証拠が揃っている。言い逃れは出来ない」

 言われた言葉に思わず殿下から視線を逸らした先にいたのは、震える体を彼に支えられ瞳を潤わせる一人の令嬢。

 男爵家令嬢という卑しい身分で殿下に付き纏った、サラ・ミルズ――。

 そう……あの女さえ居なければ、私の想いが殿下に届いていたはずなのに。あの女が居なくなってくれれば何事もなく、明日の婚姻式で結ばれるはずだったのに。

 なのにどうして、どうしてこうなるの?私はただ、殿下に愛されたい……それだけだったのに。

「違うんです、殿下!私はっ、私は――!」

 最後に必死に足掻こうとする私に止めを刺すように、殿下ははっきりと告げた。

「この場を以て宣言する。エリーザ・ハシュベルグを聖女暗殺を企てた罪により極刑に処す」

 突然の死の宣告に今まで募らせてきた殿下の想いが崩れていき、ざわめく会場の中で一人、音のない暗闇の世界に放り込まれたようだった。寄り添う殿下達の姿すらも、視界には入ってこない。

 体に力が入らなくなった私を押さえつけていた衛兵達に無理矢理起こされ、拘束されるがまま王宮の地下牢へと投獄された。繋がれた鎖の重さが、今まで重ねてきたあの女への仕打ちに対するものだというように体を締め付けてくる。
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