十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
それが殿下にとっても、私にとっても良い未来に進める方法なのだから。その為なら、私は嫌われる努力をここぞとばかりに発揮するしかない。
今までが悪役令嬢だったのよ?そんなの造作もないわ。
「エリーザ……」
ふふっ、こんな女、ガッカリしたでしょう?呆れたでしょう?
悪役令嬢としての私に対して、嫌な感情を芽吹かせることができたなら大成功よ。
私は呼ばれても反応せずにここでお暇しようと別れの挨拶を伝えようとしたけれど、いつの間に殿下が隣に居た。
可愛くない奴だ、とでも罵倒しにきたのかしらと期待を込めて流し目で殿下を見た。
「不快な想いをさせてすまない。もう勝手に君に触れたりしない」
予想外な殿下の反応に、悪役令嬢としての立ち振る舞いを忘れそうになるのを必死に堪える。
「わ、分かってくださるなら結構ですわ」
「勝手には触れない。だから……今君に触れたいんだが、いいか?」
「はい?」
「エリーザの了承が必要なんだろ?だから、触れる前の確認だ」
私の前に立った殿下は、まるで了承してくれないと帰すつもりはないとでも言うように道を塞いできた。