十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
あれだけ落ち着き始めていた心臓が瞬く間に鳴り響き、殿下の唇が触れたところから火傷したみたいに熱が広がっていく。
何も答えられないまま、急いで馬車から降りて屋敷の玄関へと向かう。
後ろから聞こえてくる馬車の音が遠のいていくのを聞きながら、屋敷の中へと入った途端、その場にしゃがみ込んだ。
い、今のは一体ど、ど、どういう……?!
嫌われなきゃいけない相手だということは重々理解しているつもりでも、殿下が私を落としに来る。いや、きっと何か裏があるはずよ。じゃなきゃ、こんな私に優しくする理由がない。
頭ではそう分かっている。だけど心臓が何個あってもたりないくらいに、殿下に対する想いが爆発してしまう。
嫌われようと努力してるのに、どんどん殿下のことを好きになってどうするのよ!
この難題をクリアしないと、今回は生き残れないっていうの?!
全力で悪役令嬢を演じ切らないと色んな意味で私、死んじゃうじゃない!!
嫌われて殿下のあんな演技の優しさの裏側を暴いて、晴れて生き残ってみせる。絶対に!
「なのに、なんでこんな嬉しくなっちゃってるのよ、私の馬鹿ぁ……」
両手で顔を覆って、顔が熱いことに気がつきますます熱くなる。
その熱はベッドに入ってからも冷めることはなく、別れ際の言葉を思い出してその日の夜は中々寝付けなかった。