十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
でも待って……?昨日、サラは聖女の力を使っていない。なら、サラの編入はなかったことになるって事?でも、編入生の噂が立っている現状は今までと一緒……よね?
「お隣、宜しいか?」
「ええ。お好きにどうぞ」
掛けられた声に振り返ることなく、私はぐるぐると回る思考回路に浸かっていた。
妙に隣との距離感が近い事で、ようやく我に返った私は隣に座った人物を見た。
「おはよう、エリーザ。昨夜はしっかり眠れたか?」
「っ……!」
朝の清々しさに負けない、爽やかな笑みを浮かべて隣に座っていたのは殿下だった。
動揺を隠せない私を面白そうに見つめる殿下は、一気に距離を縮めて来たかと思えば耳元で悪戯気に囁いた。
「昨夜のエリーザの温もりが忘れられないんだ。君に触れていいか?」
「なっ……!」
こんな人の目がある教室でなんて事を言うんですの!と怒って、悪役令嬢らしい立ち振る舞いをしたいのに、体は言う事を聞いてはくれない。
拒絶しようにも殿下の眼差しが熱い……。
「ひ、人前で、そんな……」
頑張って吐き出した言葉は、弱々しく悪役令嬢としての風格はまるでない。