十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
「ああ……そうか。なら二人きりなら許してくれる、そういう事なんだな」
不敵に笑う殿下は、絶対何かを勘違いしている。
違う、違う、違いますっ!
顔が真っ赤になった私が首を横に振った所でまるで説得力はない。
周囲の目線に気に掛ける余裕も無かったけれど、私に救いの手を差し伸べるように始業の鐘が鳴り響いて、殿下がゆっくりと離れた。
「じゃあ、次の休みは空けておいてくれ」
私の返答しないことも関係なしに殿下は嬉しそうに小さく笑っていた。
その笑顔の破壊力、凄まじいです殿下。
狼狽える私を置き去りに、先生が教室に入ってくると教室内は一気にざわついた。
余裕が無かったけれど、その声を聞いた途端に私の中で何かが燃え滾った。
「本日より、皆さんと一緒に勉学に励んで参ります。サラ・ミルズと申します。よろしくお願い致します」
短めに整えられたチョコブラウン色の髪を揺らしながら、教室全体を見渡す円らなネオングリーンの瞳はキラキラと輝き、鈴の音のように軽やかで可愛らしい声はしっかりと皆の耳に届た。
何より誰もを惹きつける、その笑顔は誰もが釘付けになる。この、私までも。