十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
「エリーザ様、そろそろいい加減起きてくださいませ」
「ううーん……」
「そんなだらしないと、クラウド様に愛想尽かされますよ?」
うるさいわね。どうせ私は愛想尽かされるどころか、憎まれて殺されたんだからほっといてよ。
これは走馬灯と言われているやつかしら。
見られるものなら、幸せな時間を過ごしていた記憶を見たかったというのに。
こんな侍女に起こされる日常的な記憶なんて見ても、冥土の土産にもならないわよ――。
「時間切れです。強制的に起こします」
「きゃっ!」
いきなり温かさを奪われ冷たい、でも気持ちの良い朝の風に肌が擽られる。
眩しい程に輝く太陽の光も、寒さに暖を取ろうと摩る自分の肌の感触も、まるで本物のようだった。
これは走馬灯でも夢でもない……?