十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
昔から殿下と一緒に遊ぶ時には後ろからついて来て、妹か弟が欲しかった私にはそんなフォルスが可愛くて何かと面倒を見ていた。
二歳下のフォルスとは通う学校が同じとは言っても学年ごとに校舎が違う為、中々会わなくなった。
それでもいきなり飛び込んできた私に心配して声を掛けてくれるフォルスは……やっぱり優しい。
「今日は兄上主催のお茶会だったよね?どうかしたの?泣いてるけど……」
「え、あ、少し喘息がでちゃって……皆に心配されたくなくて抜け出してきたの」
「それで僕の読書部屋に入ってくるなんて、すごい偶然だね」
咄嗟に誤魔化したけど、何かを隠している私に何かを追求してくることはなく、座るように促してくれた。
「読書の邪魔をしてごめんなさい」
「いや、少し行き詰まっていた所だったから気にしないで」
そう言って、閉じた本の背表紙には『古の聖女』と書かれていて、目を見開いた。
もしかしたら、フォルスなら何か知っていてもおかしくない。
「聖女について調べているなんて、何かあったの?」
「兄上から、何か聞いてない?」
「ええ……」
私自ら殿下を避けているとは口が裂けても言えない。