十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
「行くぞ」
低く唸るような声に、身が縮こまりそうになる。
私の顔も見ないまま、どんどん先へ進んでいく殿下の後ろを追いかけるように足を動してしまう。
でもここで流されてはダメ。踏ん張るのよ、エリーザ。
「一人で行けますので、殿下手を離してくださります?」
「断る」
「気安く私に触れないでくださいと言ったことをお忘れで?」
しっかりと計画通りに動かないと皆が不幸になってしまう。
心を鬼にして、絶対にめげないであろう殿下に太刀打ちしようと構えるけれどあっさりその手は離された。
「……もう我慢の限界だ」
突き放すような態度で、こちらを見向きもしないまま殿下はそう言った。
そして少し先で心配そうに待っていたサラと目が合った。
殿下はサラに何かを耳打ちすると、サラは目を僅かに見開き静かに目を閉じた。
そして再び持ち上がった瞼の奥で光る瞳には、いつもの優しさは見受けられない。
「エリーザさん。あの方の事を考えているというのなら諦めて下さい。私が射止める相手です。邪魔はしないでください」
サラが発した言葉は直ぐに理解出来なかった。