十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
疑問が湧いて出るのに、頭がぼうっとする。
私はそのまま着せ替え人形のように次々にドレスを試着し、最終的に紫を基調としたドレスに決まった。
「とっても良く似合うわ。あとはこれを付けてっと」
胸元に輝く黒いユリの花と鎖をモチーフにしたブローチ。
それを付けたダニエラ様は満足気に頷いた。
「これで間違いなく輝くわ。そのブローチは舞踏会までエリーザが持っていて」
「はい」
渋々受け取ろうとする私の手の平にしっかりと握らせたダニエラ様は、小さく微笑んで仕事へと向かうべく部屋から出て行った。
やることをこなした私はそのまま真っ直ぐに家に帰ればいいのに、中々足は帰路に向かわず、王宮内をひっそりと歩いた。
そのまま無心で歩いていた私は、吸い寄せられるように庭園に足を踏み入れていた。
お茶会の時同様、咲き誇る薔薇の香りが鼻を擽った。
不思議とぼうっとしていた靄がかかったような意識も晴れていくような気がした。