十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
光が消えると、一瞬意識を失ったダニエラ様の瞳が開かれた。
「母上!!」
駆け寄ったフォルスがダニエラ様の顔を覗くと、何かあったのか思い出せないようで涙目になる息子を抱きしめた。
ざわついていた会場内は一人またひとりと拍手がし始め、平和が齎された瞬間だと大きな拍手が響き渡った。
「今日という日にこの私の婚約者であるエリーザに聖女の力が開花した。皆、これからの国の安泰に大いに喜んでくれ!」
殿下がそう言うものだから、私に視線が集まるけれど今の自分の格好が恥ずかしくなって殿下の後ろに隠れた。
「随分と大胆にくっついてくるな」
「そうではなくて……!私、格好が酷いことに!」
「水も滴るいい女だ」
「からかわないでください!」
「仕方ない、着替えに行こう。フォルス、サラ、後は頼んだ」
いきなり横抱きにされて、会場内を歩き始めた殿下はどこか嬉しそうだけど、私にはそんな余裕はこれっぽっちもない。
着替えるために部屋に入ったというのに、一向に殿下は部屋の外に出ようとしない。
これじゃあ、着替えられない……のに。