十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
「……」
入ってきたのはいいけれど、無言のままその場に固まっている殿下に声を掛けようとするけれど視線を逸らされた。
「殿下?」
「すまない。見惚れただけだ……」
「ふふ。似合ってますか?」
「ああ。世界一美しい」
幸せそうに微笑む殿下に釣られて私も笑って、一緒に部屋を出た。
あの日、私は地獄のような夢を見た。
大好きな人に殺される、最悪な夢を繰り返し見ていた。
でも……大好きな人もまた同じように救えなかったと後悔に溺れ、自ら命を絶ち、亡くなった兄の悲しみに閉じこもりになった弟を想う聖女も自分の無力さに悔やみ、世界の危機を放棄した。
誰も幸せになれないと、諦めていた大好きな人は遂に悲しみの連鎖を断ち切ることに成功した。
誰もが幸せになれなかった世界が変わった大きな瞬間に私は死んで、またこうして人生を歩み始めた。
新たな人生で、死なないように歩んだ悪役令嬢としての立ち回りは、大好きな人にベタベタだったはずの私の人格が変わってしまったのかと困らせてしまうこともあったらしい。
でも、想いは……私の中に燃える殿下を想う気持ちだけは何も変わってなどいなかった。
大勢に祝福される中、私達は見つめ合って神父の声にこれまでのことを馳せた。
「健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、共に歩み、死が二人を分かつまで――」
私がこれまで死んで届けられなかった想いと共に、殿下を想う。
例えまた、繋がれた鎖のように繰り返される日がやって来たとしても……。
「永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」
この愛がある限り、私は何度でも貴方に愛しているを伝えにいきます。
FIN.