網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

桜は過去のタイトル

桜の季節。


毎年、それを飽きもせずに眺めるのが、日本の国民的趣向なんだなと実感する。


制服を着崩さず、私は登校する。


着崩している人にも、そうじゃない人にも。


桜は似合う。


それに、


私自身、綺麗とは思う。



でも。


「来週のドラマはさ、りっくんが告ったりしたらいいよねー」


「わかるー!」


「しかも桜の咲く中でとか」


「夢あるわー・・・」



通りすがっていく女子高生とは違って、憧れを抱けるほどの美しさは感じない。


私だって最初は、こんなんじゃなかったんだよ。



綺麗な桜の中で。


あの人を、失うまでは――・・・。
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