網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。
耐え切れず、顔をそむける。



「・・・好きだった。」


「で、忘れさせて欲しいわけ?」


「ちょっと違う」


「何が?」


「・・・大和のことは忘れちゃいけないって思ってる。私が今ここにいるのは大和のおかげだし」


「うん」


「でも、最後の・・・この前言った、最後の感覚がすごく苦しくて・・・
 次の人に、迷惑かけちゃうかなって。
 だから、我儘としてそれをなくしてほしいと・・・思ってる」


そしたら、春夜の視線が多少和らいだ。


「・・・じゃあ俺とちゃんと向き合うために、俺に条件出したの?」


小さく頷く。


っていうか他に理由ないし。


春夜は一度ため息を吐くと、私を解放した。



「なんなのそれ、無理・・・もっと好きになんじゃん・・・」


彼は私に背を向けた。


呟いたのが本気かどうかわからないけど、その言葉に私の顔は赤くなった。
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