網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。
誰か、私との会話を楽しいと思ってくれる人はいないのか。


それを目当てに、私との時間を過ごしてくれる人はいないのか。


そう思えば、男子なんてみんな信用できなくなってしまった。


だから、中学校は有名私立を選んで受験した。



知っている人のいないところで、もう一度試してみたかった。


お父さんを頑張って説得して、かなりのお金も出してもらった。


かかるお金が特に高いことで有名なその中学に、

そして偏差値が異常に高いその中学に、

公立小学校に通っていて、噂にすぐ流される人が行くわけもないから。



容姿を隠すために、欠かさずマスクをすることにして。


度の入っていない太い縁のメガネをつけて。


それまでサラサラに保っていた髪の毛も、わざとぼさぼさにして。


唯一マスクを外さなければいけない昼食も、

給食がなくてお弁当か食堂で食事をする方式だったから、



空き教室を毎日頑張って探して、一人で食べて。


私は自分の内面を、ここで初めて通用するかどうかを試してみたんだ。
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