網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。
――そしたら。
「沙月、好きだよ」
「・・・え?」
「傍にいると幸せだし、話してると楽しい。こんな気持ちになったの、初めてなんだ」
窓から差し込んだ夕日の中にいるその人が、照れ笑いをしたのを忘れることはできない。
それから付き合っていた毎日は楽しかった。
家は反対側だったから、一緒に登校することはできなかったものの。
「おはよう、沙月」
「うん、おはよう」
朝、隣の席で挨拶を交わして。
「部活頑張ってね」
「疲れた。もうやだ」
「そんなこと言わずに!」
「・・・沙月が言うなら」
帰るまで、一緒に喋って。
冗談を言い合って笑う。
自然と手をつなぐ。
気づけば、私も彼を好きになっていた。