網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

そして・・・たった一度、私の本当の容姿を見せたことがあった。


休日に、髪の毛も元に戻して。・・・髪質はちょっと傷んだままだったけど。


マスクを外して。


拍子抜けしていたその人の顔は、写真に撮りたいくらいにレアなものだった。


その日、私たちは初めてキスをした。


初めてだったけど少し深めの、優しさに溢れたキス。



――忘れることのできないその感覚を、私はまだ憶えてる。
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