網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。
「でも、その人――」


そして私は最後に、私が条件を出すようになった決定的な理由を告げた。


「もういないの」


「・・・は・・・?」


「中3の、春休みにね・・・私に、会いに来てくれて・・・っ、」



だんだんと、声が喉でつっかかってくる。


「・・・幅の狭い道で・・・後ろから来たっ・・・飲酒運転の車と・・・」


「・・・わかった。わかったから、泣きたいだけ泣け。もうそれ以上は話さなくていい」




私は首を横にふる。


気づけば、私の視界は今にも溢れて零れそうな涙で絶え間なく揺れていた。




春夜は私の背中をさすってくれたけど、自分を好きになってくれた人に、全てを話したかった。


「っ・・・病院に行った時には・・・もう・・・遅くてっ・・・、」


「うん」


「最後にっ・・・、私に・・・触るだけの、キスして・・・っ、いなく・・・なっちゃった・・・っ」
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