約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「脅しているんじゃない、秘密を共有したい」

「共有って」

「人間の血を欲し、飲むという意味だって分かってるくせに。素直に認めてくれないかな? 僕は数値や言葉で納得させたくない」

 四季さんはわたしにかなり好意的だ。しかしながら長年ひた隠しにしてきた秘密を打ち明けるに値するか、まだ判断できない。
 その一方でわたしの中の私と表現するが、四鬼さんの言葉を待ち侘びていたように胸を締め付けてくる。

「でも、すいません、どうしたら良いか分かりません」

 これでは半ば血を飲んでいると自白しているようなもの。それでも本心だった。

「ううん、謝るのは僕。本当はお互いの理解を丁寧に深められるのが理想なんだけど、そうしてあげられない理由が山盛りで」

 歩み寄ってきたかと思えば身構えたままのわたしを通り過ぎ、四鬼さんは前方へ厳しい眼差しを向ける。

「例えば理由そのいち。はぐれた元同士が僕の花嫁を襲おうとする」

 振り返るとスーツ姿の男性がこちらへ近付いてきていて、ふらふらした足取りは酔っ払っているみたい。

「桜子ちゃんは危ないから動かないでね。それと柊を呼んでくれないかな?」

 コールし始めた状態の携帯電話を渡し、四鬼さんが腕や足のストレッチをする。
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