約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「……君は、鬼姫かい?」

 先ほど男性も私を【鬼姫】と呼ぶが、四鬼さんも重ねた。私は認識されるのが嬉しいらしく、わたしの身体で何度も頷く。

「えぇ、えぇ、四鬼様。ずっとお会いしたかった!」

 四鬼さんに対して懐かしい、愛しい、私の感情がわたしへ流れ込み、その好意に共鳴する。わたしと私は別人格のはずなのに四鬼さんをもうかなり前から知っていて、結ばれるのが必然と納得してしまいそう。

「もしもーし? 浅見さん? 鬼姫って? 大丈夫ですか?」

 握ったままの電話口で柊先生が問う。先生の声は現実に引き戻すも、安否確認に応じるのは私の方だ。

「貴方ーー柊? 今も私に代わる鬼姫を作ろうとしているのかしら?」

 わたしが私の感情を汲み取れるよう、私もわたしの気持ちに干渉する。記憶にある柊先生の姿を探られ、カウンセリングを受ける様子が脳内のスクリーンで流れた。

 客観的に保健室のやりとりを改めて見れば気付く。
 イケメンカウンセラーと言われるのは表情がお手本通りでブレがないからだ。
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