約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「とんでもない、鬼姫様は唯一無二です。それで覚醒なさったのでしょうか?」
先生は私を唯一無二とは思っていない。表情が見えないと分かりやすい。
「残念ながらまだよ。でも直にひとつになれる」
私は言い切り、わたしもそうなるであろうと予感する。むしろ統合されるべきとさえ思えた。
「ーーそうですか。僕は浅見さんとお話したいのですが代わって頂いても?」
「いいわ、そろそろ疲れてきたし。四鬼様に早く迎えを寄越してね」
「言われなくとも早急に」
不意にスイッチが切り替わり、力が抜けて蹲る。すかさず四鬼さんがスーツの男性を拘束し、こちらを心配した。
「大丈夫? 桜子ちゃん」
「え、あっ、はい。なんとか」
身体がとてつもなくダルい。自由を奪われてる間に体力がかなり消費されている。
「あぁ、良かった。君に大事があれば大変だ」
言いつつ、よろけるわたしを支えてくれない。触れてこない。
「わたし、どうしちゃったんでしょうか? 鬼姫って? 四鬼さん達は知ってるんですよね?」
説明してと言いつつ、胸に手を当てて尋ねれば答えを得られる気もした。そうしないのは四鬼さんから聞きたいという建前で、本音は知ってしまうのが怖いから。
「君の中に鬼姫の存在を確認した以上、ここからは当主の管轄となる。ごめん、僕からは何も言えない。当主を含めた席で話をしよう」
「血がーー」
殴られた際の出血を気遣うと四鬼さんは明らかに顔を背け、誤魔化すみたいに先生と会話する。
わたしはポツンと転がったままの携帯電話を拾う。充電がなくなり電源が落ちているが、これは確かにわたしのものだ。
それから柊先生が車で迎えにくるまで、わたし達は沈黙したのだった。
先生は私を唯一無二とは思っていない。表情が見えないと分かりやすい。
「残念ながらまだよ。でも直にひとつになれる」
私は言い切り、わたしもそうなるであろうと予感する。むしろ統合されるべきとさえ思えた。
「ーーそうですか。僕は浅見さんとお話したいのですが代わって頂いても?」
「いいわ、そろそろ疲れてきたし。四鬼様に早く迎えを寄越してね」
「言われなくとも早急に」
不意にスイッチが切り替わり、力が抜けて蹲る。すかさず四鬼さんがスーツの男性を拘束し、こちらを心配した。
「大丈夫? 桜子ちゃん」
「え、あっ、はい。なんとか」
身体がとてつもなくダルい。自由を奪われてる間に体力がかなり消費されている。
「あぁ、良かった。君に大事があれば大変だ」
言いつつ、よろけるわたしを支えてくれない。触れてこない。
「わたし、どうしちゃったんでしょうか? 鬼姫って? 四鬼さん達は知ってるんですよね?」
説明してと言いつつ、胸に手を当てて尋ねれば答えを得られる気もした。そうしないのは四鬼さんから聞きたいという建前で、本音は知ってしまうのが怖いから。
「君の中に鬼姫の存在を確認した以上、ここからは当主の管轄となる。ごめん、僕からは何も言えない。当主を含めた席で話をしよう」
「血がーー」
殴られた際の出血を気遣うと四鬼さんは明らかに顔を背け、誤魔化すみたいに先生と会話する。
わたしはポツンと転がったままの携帯電話を拾う。充電がなくなり電源が落ちているが、これは確かにわたしのものだ。
それから柊先生が車で迎えにくるまで、わたし達は沈黙したのだった。