約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 変わりたい、わたしの為なら変われるとまで言い切る四鬼さんなら、ありのままを受け入れてくれるかもしれない。
 考えてみたら四鬼さんには八つ当たりばかりして、その都度許されている。
 
 器が大きく、包容力も高い四鬼さん。仮にわたしに対してのみなら、どうだろう?

(そんな、あるはずないか)

 否定しつつ、不思議とイメージがわいてしまうので困る。なんだか四鬼さんと手を取り合い歩む未来は想像しやすいのだ。わたしさえ意地を張らず、気持ちを重ねればいい。

 車が近所を走行しだし佇まいを正す。授業をさぼってしまうも、柊先生がフォローをしてくれたはず。帰ったら寝る予定だったが、情報整理をするくらいの気力を取り戻す。

 この先どうしていくべきか、自分なりに考えてみよう。

「送って下さり、ありがとうございました」

 自宅に到着、運転手さんにお礼を告げて頭を下げた。

「これから四鬼さんを迎えに?」

「いえ、タクシーを使われているでしょう。それより無事に帰宅された旨を坊ちゃまに連絡してあげて下さい」

「……連絡」

「ひょっとして番号をご存知ではない?」

「実は知らなくて」

 運転手さんの意外そうなリアクションは最もで、わたしも今更ながら四鬼さんの連絡先を知らなかったと気付く。

「こちらをどうぞ」

 手帳を開き、さらさらと暗記した数字を書き込み、破いて渡してくる。
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