約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「勝手に教えたりして大丈夫ですか?」

「むしろ、お教えしなかったら怒られてしまいます。連絡差し上げて下さいね」

 運転手さんは念を押して去っていった。

 メモには電話番号の記載しかなく、文章でのやりとりは不可。緊張するけれど電話を掛けるしかなさそうだ。

 そういえば、わたしの携帯は充電をしっぱなしである。玄関を開けたらコール音が響いており、思い出す。

 急いで2階へ駆け上がり、ディスプレイを確認してみると着信相手は涼くん。

「もしもし? 涼くん?」

 あまり深く考えず応答する。

「! お、お前! なんで?」

「なんでって、わたしの携帯だよ? 間違えて電話しちゃった?」

「間違えてなんかない、お前の携帯に掛けてたんだから。で、今何処だ?」

「え? 家だけど?」

「家? 今朝はよくもーーいや、それはこの際どうでもいい。携帯見つかったのか? それとも新しいのを買ったのか?」

「あっ……」

 四鬼さんと一族の件で頭が一杯になって、うっかり出てはいけない電話に出てしまったようだ。

「お前の携帯、盗まれたんじゃなかったか?」

「う、うん。そうなんだけど」

「その感じだと、新しいやつ買った感じじゃないな。警察から戻されたのか?」

 そうか、この携帯は警察も捜索している。迂闊に電源を入れたら駄目だった。
 盗まれたのは勘違いで部屋からひょっこり見付かったと言おうか? それで納得して貰えるだろうか。
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