約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
失った初恋
■
「起きた?」
目に涙を一杯溜めて、わたしは目覚めた。保健室の天井が滲む。
「悲しい夢を見ていたのかな?」
ベッド脇で雑誌を読んでいた四鬼さん。目隠しは外され、制服の乱れも直してあった。
「初恋を無くした夢を、見てました」
「……そう、それは悲しいね。相手は夏目君かな?」
四鬼さんの優しい声に涙が溢れる。仰向けのまま目元を覆う。
「初恋は実らないとも言われる。早くキレイで甘酸っぱい過去にしようか」
「四鬼さんの初恋は?」
「君だよ。あぁ、実らないのは困るな」
「わたし、ですか?」
「信じてくれないだろうけど、桜子ちゃんが初恋だ」
身体を起こすと四鬼さんが両手を広げた。わたしはゆっくり彼へ半身を預けて泣く。素直に頼れば何処までも甘やかしてくれそう。
「柊先生にキスマーク付けられました」
「あぁ、見た。次あったら殺しておくーーって言うのは言葉のあやで、やっぱり殺しておく」
「え、こ、殺さないで下さいね? ほんの少しですが先生の気持ちが分かるんです。柊先生の恋人は人だったと聞きました」
四鬼さんはギュッと抱き寄せる力で話題に反応する。
「先生、わたしと涼くんの関係に苛立ったんじゃないかと思うんです」
「君は夏目君を鬼にしたくないんでしょ? なら柊とは結末が違う」
包容からは優しさしか香らない。わたしを案じて労り、ひたすらに甘い。
「起きた?」
目に涙を一杯溜めて、わたしは目覚めた。保健室の天井が滲む。
「悲しい夢を見ていたのかな?」
ベッド脇で雑誌を読んでいた四鬼さん。目隠しは外され、制服の乱れも直してあった。
「初恋を無くした夢を、見てました」
「……そう、それは悲しいね。相手は夏目君かな?」
四鬼さんの優しい声に涙が溢れる。仰向けのまま目元を覆う。
「初恋は実らないとも言われる。早くキレイで甘酸っぱい過去にしようか」
「四鬼さんの初恋は?」
「君だよ。あぁ、実らないのは困るな」
「わたし、ですか?」
「信じてくれないだろうけど、桜子ちゃんが初恋だ」
身体を起こすと四鬼さんが両手を広げた。わたしはゆっくり彼へ半身を預けて泣く。素直に頼れば何処までも甘やかしてくれそう。
「柊先生にキスマーク付けられました」
「あぁ、見た。次あったら殺しておくーーって言うのは言葉のあやで、やっぱり殺しておく」
「え、こ、殺さないで下さいね? ほんの少しですが先生の気持ちが分かるんです。柊先生の恋人は人だったと聞きました」
四鬼さんはギュッと抱き寄せる力で話題に反応する。
「先生、わたしと涼くんの関係に苛立ったんじゃないかと思うんです」
「君は夏目君を鬼にしたくないんでしょ? なら柊とは結末が違う」
包容からは優しさしか香らない。わたしを案じて労り、ひたすらに甘い。