約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
ほぼ手つかずの皿を下げて、お母さんは急かす。
「おい、おばさんに怒るなよ。うちの母さんがお前の事だから休まないだろうし、一緒に行ってやれって言ったんだ。それに携帯盗まれたんじゃ、連絡できない」
洗い物をする音に紛れ、涼くんは小声ながら的確に釘をさし、話を聞かれてしまったわたしの気まずさを流す。
幸いと言うべきか、今回の被害は玄関のドアが歪み、インターフォンが故障。あと携帯電話を持ち去られた程度で済む。
わたしに実害及ばなかったのも不幸中の幸いとはいえ、女子高生の新生活において携帯電話が無いなんて支障が大きい。
「桜子! まだ居たの? 涼くんを待たせちゃ駄目じゃない。ごめんなさいねぇ、この子ったら動きが遅くて」
途端に登校したくなくなり、気が重い。お母さんに涼くんの側まで引っ張られた。
涼くんはお母さんにだけ頷き、先に玄関へ向かう。その背中には怒りが滲み、ますます憂鬱にさせられる。
「帰りも涼くんに送って貰えるようにお願いしてあるから」
「え、帰りも?」
「そうよ、涼くんは部活があるから終わるまで勉強するなり、本を読むなりして過ごしなさいね。この際だから美術部に入ったら?」
「おい、おばさんに怒るなよ。うちの母さんがお前の事だから休まないだろうし、一緒に行ってやれって言ったんだ。それに携帯盗まれたんじゃ、連絡できない」
洗い物をする音に紛れ、涼くんは小声ながら的確に釘をさし、話を聞かれてしまったわたしの気まずさを流す。
幸いと言うべきか、今回の被害は玄関のドアが歪み、インターフォンが故障。あと携帯電話を持ち去られた程度で済む。
わたしに実害及ばなかったのも不幸中の幸いとはいえ、女子高生の新生活において携帯電話が無いなんて支障が大きい。
「桜子! まだ居たの? 涼くんを待たせちゃ駄目じゃない。ごめんなさいねぇ、この子ったら動きが遅くて」
途端に登校したくなくなり、気が重い。お母さんに涼くんの側まで引っ張られた。
涼くんはお母さんにだけ頷き、先に玄関へ向かう。その背中には怒りが滲み、ますます憂鬱にさせられる。
「帰りも涼くんに送って貰えるようにお願いしてあるから」
「え、帰りも?」
「そうよ、涼くんは部活があるから終わるまで勉強するなり、本を読むなりして過ごしなさいね。この際だから美術部に入ったら?」