約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 美術部に入ったら? 軽々しく言わないで欲しい。わたしが居ないところで勝手に話を纏められても困ってしまう。
 結局、文句を受け付けない笑顔に見送られて涼くんの後ろを歩く。

「ふて腐れた顔するなよ。みんな、お前を心配してるんだ」

「それは分かるけど。涼くんを巻き込む事ないよ。ごめんね、サッカーやりたいよね?」

「……」

 あぁ、また無視された。いっそ置いて行けばいいのに、こういう時に限って歩幅をわたしに合わせる。

「本当にごめん。こんな風にわたしと居たら誤解されちゃうね、でも涼くんとはそんなじゃかいって説明するから!」

「誤解って何?」

「登下校を一緒にしてたら、その、わたし達が付き合ってるとか噂されちゃうでしょ」

「自意識過剰。誰も気にしてない」

 いや、気にされている。現に涼くんは同じ制服を着た子達の注目を集めていた。
 幼馴染みというフィルターでひいき目に見ているとしても、涼くんはかっこいい。サッカーで鍛えた身体だけでなく、精神面も大人びている。
 それに比べ、わたしはーー。

「俺はお前と付き合ってると噂になろうが、どうだっていい。噂は雑音だ」

 涼くんが足を止め、振り向く。

「え?」

 顎で隣に並べと示す。 
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